Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商標の管理(Trademark management)(その2)

登録

昨日の続きです。

この登録の章では、商標登録の条件や、主登録と補助登録、重複登録、登録の効果といった、法律的なところを説明しています。

 

まず、登録されるのは、

  1. 商品商標
  2. サービスの商標
  3. 団体商標
  4. 証明標

とあります。

 

●登録の種類には、主登録簿(Principal Register)と補助登録簿(従登録簿と訳されています。Supplemental Register)があります。

「主登録簿」には、

  1. 造語(KODAK
  2. 普通の語が他の商品に使用(タバコにCAMEL)
  3. 想像で作られた図形など(RCAのHIS MASTER'S VOICEの犬の絵)
  4. 使用による特別顕著性が認められたもの(シンガー:姓、デュポン:姓、タバスコ:地名)

「補助登録簿」には、

  • 人名、成句、姓名、地理的名称、標語、数字で、識別力はあるが、使用期間が長くなく、実質的に広範囲に使用されていないものが入るとあります。
  • ラベル、包装紙、商品の形状も、補助登録簿に入るとあります。
  • 一年間の「合法的使用」(独占的使用ではない)が必要

スローガン(標語)(当時のアメリカでは、スローガンを商標登録する会社は少数派とあります。広告的使用では商標登録の要件に当てはまらないためのようです。

 

●商標登録の条件としては、

ランナム法(The lanham Act ※現在の日本では、ランハム法と訳されていますが、hは発音されないので、ランナム法、あるいは、ラナム法が、正しいと聞きます)は、次の4つを要件とする

  1. 公序良俗に違反しないこと
  2. プライバシーの権利(私的秘密保持の権利)を侵害しないこと
  3. 他人の標章、商号と混同を起こさないこと
  4. 説明的、欺瞞的な虚偽表示、地理的名称、姓名からの標章でないこと

公序良俗違反の例として、赤十字、「連邦」「ナショナル」「合衆国」などの語、軍隊関係の記章、勲章などが挙げられています。

・プライバシーの権利とありますが、人格権由来の氏名、肖像権を言っているようです。有名人の氏名が、商標になるのは、極めてよくあるケースです。

・混同の要件は、登録され、使用されている商標との類似は登録しないという要件です。特に、商標同一・商品同一(ダブルアイデンティティ)に言及し、さらに商品類似も排除するとあります。商標同一で、商品非類似のときは、異議をもって判断するようです。

また、商標にも、類似範囲があるとします。

ポイントは、連邦登録の調査だけでは不足で、既に使用されている標章と商号を調査するという点です。

また、調査時と使用開始時の時間のズレも指摘しています。

・説明的~は省略

 

●変形標章の登録

標章のデザインが変更する場合、綴りが変更する場合、翻訳語の問題などに振れています。

「弾を打ち散らすな!」一つの標章を選び、それを集中するように薦めています。

 

重複登録

ジョンソン エンド ジョンソンとバンドエイドです。

 

●登録の効果

主登録では、権利範囲の公示と、排他権があることの一応の証拠、登録証は裁判での証拠になり、無効等の挙証責任が相手方に転嫁される、外国における権利取得の根拠となる、などです。

補助登録では、外国における権利取得の根拠となる程度です。

 

コメント

さて、この章の筆者は特定人ではなく、商標管理委員会となっています。登録制度の話しと云いながら、「弾を打ち散らすな!」など、実際的な示唆があります。

 

さて、

●混同のポイントは、商号に言及しているところです。

日本でも、現在は、会社法では類似商号のチェックが同一市町村でえされなくなり、強くなった不正競争防止法を使って、各社が自分の商号は自分で守る必要が出ています。

商標なり商号なりの選択時には、自分で商標と商号をクロスして、チェックする必要があります。

検索エンジン帝国データバンクなどのDBを使えば、ある程度はできます。商標的な要素のある商号は商標調査をしますし、反対にハウスマークの変更時のように、重要な商標の場合は、商号調査(インターネット調査)ぐらいはやらないと怖くて使えません。

 

●冒頭の萼先生の注に、昭和34年法改正では、登録主義に立脚するが、使用主義的要素を入れることになっており、「商標を使用している者または使用する現実かつ真誠の意思がある者」に限定するとあります。

 

しかし、先生のこの説明の部分は、実現しておらず、大阪の元弁理士の件を生み出す原因になっています。

同意書や先使用権と並び、日本の法改正で議論になるポイントです。

 

昭和34年法では、自由譲渡や商標のライセンスを認めましたが、特に、アメリカ法と異なり、Quality Controlを要求せず、無条件に他人にライセンス可能としたことと整合性を図ろうとすると、真誠な使用の意思という要件が課せられなくなります。

日本では、商標法53条の取消審判では、誤認混同しか問題になっていませんが、本当は、Quality Controlをライセンスの条件とすべきであり、これと、使用意思の要件はつながっていると思います。

使用意思について、当時の立法者が、途中で意見を変えたようであり、それは自由譲渡とライセンスに遠因があるというのが想像です。

日本では、実務家を除き、学者や裁判等がまったく議論していないライセンスのQuality Controlですが(網野先生の本にはありますが、田村先生の本では考えなくて良いとあります。)、ここを研究してみる価値は高いように思います。