Ⅵ 貿易における商標管理
第6章は、海外での商標管理です。この章は、ネーミング、適正使用管理、ライセンスというよりは、通常の商標権の実務に近い内容です。
途中で「三菱」「Three diamonods」の事例が沢山でてきますので、執筆者は、三菱商事の総務部の方と思われます。
記述は、当時を前提に読まないといけませんが、面白いと思ったところとしては、次です。
1.商標の選定で、各国で好まれる言葉や、図形があるというくだりで、戦前の中国で「コールデン・バット」が人気があり、これは、中国では蝙蝠が縁起のよいものとされていることと関係あるということです。
2.世界の国の、商標権を認める方式と先使用主義と先登録主義があるという説明があるのですが、途中からは、使用主義と登録主義という言葉に変化しています。用語が揺れているなと思いました。
主に、英米法が先使用主義で、ドイツ、北欧等が先登録主義とありますが、社会主義国も先登録主義とあります。フランスは、先使用主義です。
3.テルケルマークについて、特に言及があります。商標には、250法域があり、30では本国登録証の提出が必要とあります。
4.商標の優先権を12ヶ月にするようアメリカ等が働きかけているとあります。
5.日本の会社の商号が、定款等で、Company LimitedやLtd.などとなっており、その名称で、外国で権利取得するが、イギリスでは、商業登録簿通りの表示を求めるので、Kabusiki Kaishaの記載が必要で、英国登録をベースにしないといけない国で、社名が異ならないように注意が必要とあります。
6.使用主義の英米仏では、氏姓については、厳しいとあります。
7.防護標章登録制度が、昭和34年法で導入されたのは、著名商標の保護と不使用取消審判の強化の2つの背景があるようです。
8.海外の更新は、レバノン、シリアでは、15年、30年、45年、60年から、選択できるとあります。
9.商標登録標記が、義務の国、アメリカのようにメリットがある国の紹介があり、しかし、登録がないのにつけるとNG。
国名を記載するとディスクレームできるとか、©表示のように国際的な条約ができることが望ましいとあります。
10.不使用取消は、オランダは、使用権者の使用ではNG
11.ライセンスでは、ベルギーでは、ライセンシーに権利が発生するので、放棄する旨契約で記載が必要とあります。
12.紛争解決手段としては、忍耐強い警告が必要とあります。
コメント
現時点、少し古い話になっているものも多いので、そこを考えながら読む必要があります。
さて、商標の考え方で、使用主義と登録主義に並んで、もう一つ、審査主義と無審査主義があります。
フランスは、先使用主義で、無審査主義です。先に使用したものが勝つのが原則。そして、登録では実体審査もしないし、公告や異議申立もない。
フランスの登録制度は、訴訟条件であり、実体は使用の前後でみることになります。
また、同じ使用主義でも、先使用の事実の事実を重視するアメリカと、使用意思でも良いとする英国の差があるとします。
アメリカ、英国は、審査主義です。
商標権の発生を登録に求める登録主義は、ドイツは発祥です。ドイツの考え方が世界の多くの国で採用されていることになります。ドイツは、登録主義で審査主義です。
通常、意思を重視するフランス法と、表示を重視するドイツ法と理解していますが、商標におけるフランスとドイツの違いなど、勉強すると面白そうです。
ドイツは、登録=公示というものに、重きをおいているようですが、そもそも、出願時に使用意思もないものをどう考えるのかに興味があります(その判断方法も)。
外国人は、EUTMで出願することが多いと思いますし、EUTMを受けて、ドイツ法も変化しているばずですが、ドイツ法の考えは残っているのではないかと思います。