Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商標管理(日本生産性本部)(その9-2)

Ⅸ 商標管理に関する専門家の意見(その2)

続きですが、よく似たことを、各々のスピーカーが言っているところがありますので、特徴的なところだけ拾います。

 

9.抵触のおそれのある商標の調査、先登録主義国(メルク)

医薬品業界の業界登録の説明があり、この登録は、商標流通をしているとあります。(※業界内の商標の貸し借りに近いもの)

連邦登録を取ると、第三者の抑止効果があります。

南米等の登録主義国では、急いで出願せよと言っています。

 

10.商標権侵害の予防、救済(法律事務所)

連邦登録の効果として、3倍賠償があります。また、コモンローに比べて、挙証責任の転換があり、全米への公告効果があります。

アメリカは、商標侵害を不正競争と捉えるので(※特に不正に重点)、商品は類似にとらわれないとありますが、それでも限度があるとします。万年筆メーカーが蒸気ショベルまでは無理があるとします。

さらに、懲罰としての3倍賠償では原告の損害が償いきれないときは、裁判所は法定の損害賠償を命じることができるそうです。

 

11.外国貿易における商標管理(クルエット・ピーボディ)

ライセンシーや、代理店、販売員、法律家に任せるのではなく、本社に商標監視の中心部局を置くように勧めています。

 

12.権利者団体(ハセルチン・レーク)

化粧品業協会は、普通名称の商標として使用することに防止措置をとり、また、これらに対する異議申立を支援するとあります。この活動は、医薬品業協会、自動車製造者協会、機械輸出同業会がおこなっているとあります。

AIPPIは、国際団体で、各国に国内部会をもつ事業会社と弁理士を会員とするもので、パリ条約の改正が任務とあります。(※最近、パリ条約の改正がストップしているので、AIPPIは大きな仕事がないことになるのでしょうか。)

 

13.政府、裁判所の政策(法律事務所)

ライセンスや、営業(グッドウィル)と分離した自由譲渡の話をしています。

コモンローで、商標は営業とともに移転しないといけないという原則があり、緩和はされているが、廃止はできないとあります。商標は出所を示すシンボルだというところからの論理的帰結とあります。

 

著名商標保護として、ダイリューションが言及されていますが、面白いのは、事例で出てきている商標です。コダックロールスロイスダンヒルティファニー、キャデラック、コカ・コーラです。今と同じです。

 

14.スローガン、サービスマーク(法律事務所)

スローガンの起源は、ブリテン人スコットランド人が、激しく戦っていた時代に起源があるとします。

I Like Ike(アイゼンハワーのスローガン)などの政治スローガンの紹介があります。

商標と同じ意義があれば、登録になるとします。

 

社標(ハウス・マーク)は、GE、GM、DUPONT、PHILCのように、会社の全製品に及ぶものとします(※今日のコーポレートブランドと同じような理解です。ちなみに、シーグラムは社章のことをいうように、言っていました)。

 

社標に対する言葉は、ビジネスマーク(営業標)という言葉だとします。(※ビジネスマークという言葉は初めてみました。ここの営業標は直訳ですね。ビジネスマークの意味は、個別商品役務の商標という程度でしょうか)。

 

15.侵害訴訟(法律事務所)

模擬裁判ではないですが、事例を使って、二人のスピーカーが説明しています。仕立てが凝っています。

 

コメント

海外の団体が日本に来られることがありますが、2日間かけて、各社の法務部長などが順番に講演し、大変、手間のかかったもてなしです。

日本の代表的な会社の社長、特許庁の幹部、専門家が参加しているとはいえ、格別の待遇だと思います。

 

特に、アメリカ法を輸出しようとしている訳ではないですが、技術支援や商標ライセンスをしている時代背景があるのでしょうか。

 

著名商標の保護に関して、アメリカでは、不正競争の防止で行われ、一方、成文法(Civil Law)の国では、登録を不使用商品に取得するというところで行わるという指摘は面白いと思いました。

しかし、成文法国でも、不使用取消審判があるので、結局、不正競争の防止の要素を入れていかないと、妥当な解決になりません。

 

確かに、日本の昔流の商標管理では、左横書き、右横書きをとったり、一字違いを取得したり、関係ない商品まで商標登録をしたりするのが、商標に厳しい会社の商標管理とされた時代もありますが、今は、そんな会社はごく少数派です。

 

ただ、著名商標の保護は。使用主義的ですので、登録主義に接ぎ木するときは、さじ加減が必要となります。