資料Ⅰ 商標使用便覧
この本の最後に、資料が3つあります。商標使用便覧、商標使用許諾契約書例、商標に関する論文です。
まず、商標使用便覧ですが、11社のものが掲載されていますが、今日のブランドロゴ使用ガイドラインとは、少しちがいます。
ブランドロゴ使用ガイドラインは、ブランドマネジメント部門が、正しいロゴの使い方を示すもので、表示に重きがあります。
一方、ここにあるマニュアル・ハンドブックは、商標の役割、自社がもっている重要な商標、商標の選択時の留意事項(望ましい商標)、商標使用の方法(特に説明文章の中での使用方法)、普通名称化の防止策(Ⓡの使用など、普通名称とのセットでの表現の推奨)、特許部門への連絡、などとなっています。
社員一般に配布するもののようで、読みやすいものです。11社のうち一社だけ、商標法の説明書のような文章ばかりのものがありますが、他は、ロゴがあったり、箇条書きになっていたりして、見やすくレイアウトされています。
その会社の社長が巻頭言を書いているものもあり、今日のブランドブックの要素もあるようです。
当時は、まだ、ブランドブック、ブランドロゴ表示ガイドラインも、それほど一般的ではなく、このような商標部門の出すマニュアルが、一般的だったのかと思います。
今日、ブランドマネジメントが、広報宣伝系の職場に置かれることが多いですが、ここに記載されているような要素は、どの部門が発行するとしても、ね「入れ込んでおけば良いと思います。
そもそも、アメリカでも、マーケティングのブランドの定義と、商標法の商標の定義が、「差別化」と「識別」という言葉の違いを除いて、ほとんど同じですし、出所表示・品質保証・広告宣伝機能(効果)は、どちらでも言っています。
博報堂ブランドコンサルなどもありますが、基本的には広告代理店はブランドはそれほどやっていません。どちらかというと専門ブティック型のインターブランドやランドーのようなところがブランドコンサルであり、そこがブランドロゴを作ったりする延長で、ガイドラインも見てくれています。
しかし、ガイドライン・マニュアルというものの性質上、それほど創作性が高いものではないので、商標担当者でも十分作ったり、運用したりできますし、理論・事例を整理することなどは、法律的ですので、商標担当者向きの仕事ではあります。
さて、11社のうち、参考になりそうなものは、Pittsburg Plate Glass Co.のものです。今でも使えると思いました。
- 商標とは何か
- 商標の機能とは何か
- 商標の選択
- 商標はどこに使用すべきか
- 使用による商標権の獲得
- 継続使用の必要
- 不適正な使用による権利の喪失
- 商標権擁護の三原則
- 商標権擁護の追加三原則
という内容で、赤字の二つの三原則がポイントです。
商標擁護の三原則
●商標を他の文字とはっきり区別して表示すること
商標は、
大文字で書く。引用符で囲む。イタリックで書く。
(※英米が商標出願で、ロゴではなく、普通書体の大文字で商標出願することが好きな理由はこのあたりも影響していると思っています)。
●登録されているときは、その旨表示すること
ⓇやTMなどです。
●製品の説明的名称を商標とともに使用すること
窓ガラス “PENNVERNON” Ⓡ、などと表示せよとあります。
※たぶん、「 “PENNVERNON” Ⓡ 窓ガラス」もOKなのだと思います。
商標擁護の追加三原則
●商標の文法的(語法的)に誤った使用を避けること
1)商標を所有格で使用してはならない
”HERCULITE'S” great inpact strength (ハーキュライトの強い耐衝撃性)これは駄目とあります。
2)商標を説明的形容詞として使用してはならない
”SOLEXⓇ” walls and skylights (ソレックスの壁と天窓)これも駄目とあります。
※”SOLEXⓇ” windowpane(天窓) は、OKであるとの対比が難しですね。「壁、天窓」は、商品の説明的名称(普通名称)としてではなく、単なる文章の一部の「壁と天窓」に商標の”SOLEXⓇ”を掛けているが、商品との対応関係が不明確で、よろしくないという趣旨と理解しました。
3)商標を動詞として使用してはならない
”Let us "SUN-ROOF" your home”(あなたの家をSUN-ROOFにしましょう)
※「XEROXする」のようなことです。
●商標の変化を避けること
●法律上の意見を求めること
コメント
アメリカの商標の書き物で、商標は、形容詞的に使用せよというものと、商標は形容詞的にしようするなというものがあり、意味が分からなかったのですが、たぶん、この会社の説明がその答えなのだと思います。
大前提として、文章中の表現と、ロゴ的な表現でも違いますので、ここは、文章中の約束として理解した下さい。
商標は、商標と分かるように、引用符や大文字にして、Ⓡまでつけるとして、それに、商品の普通名称をセットにすることは、望ましい。
例)うま味調味料「味の素」、「味の素」うま味調味料
「”味の素”する」(動詞的)、「”AJINOMOTO's””」(所有格)は駄目。
ここまでは理解しやすいと思います。
しかし、「”味の素”の調味料と冷凍食品」がNGと言われても、ピンときません。「の」ではなく、「”味の素” それは調味料と冷凍食品」と記載することはNGように読みました。
また、ハウスマークのような広い商品に使用される商標と、個別の商品を指す商標でも違うと思います。
個別商品商標の場合は、前や後ろに普通名称をセットで記載すると、普通名称の防止にも役立ちますし、その商標の意味が分かりますが、
ハウスマークの場合、色んな商品に使われるので、普通名称化の防止の意味がありません。
そして、ハウスマークの場合、ロゴ化され、独立した表示・標記が重要ですので、現時点は、ロゴの話が影響して、ハウスマークと普通名称のセットは、NGとしている会社が多いと思います。