「やさしい経済学」の連載
2018年11月9日から11月23日まで、日経に連載されていた、一橋大学教授の鷲田祐一教授の「経営とデザイン」という連載を読みました。
各回のメモですが、
- デザイン経営:デザイナーが狭義の職能を超えて企業経営の中枢の意思決定に参画する経営スタイル。デザイナーは、既存の技術や会計制度などによる思考の制約を受けにくく、顧客起点での商品やサービスの創造・立案が得意
- デザインの定義:本来の設計も包含するものに解釈しなおす動きあり。ユーザー視点でものづくりを重視する経営を、デザイン経営と理解しやすくなる
- デザインを広義に捉える会社の方が、営業利益や成長率といった業績が良い
- 意匠法の改正(物品性を緩める、画像デザイン)
- ブランドイメージに重要なのは、ビジュアルデザインの統一による一貫性、継続性の確保(関連意匠の改正)。店舗デザイン等の空間デザインの保護
- 企業ではデザイナーは、エンジニア、経理、マーケティング人材に比べて、重視されてこなかった
- デザインの経済効果の見える化(デザイン費という費目がない。どれだけ売れたか程度しかない。アンケートの限界=消費者はアンケートでは無難な回答をする。現実と乖離)
- デザイン思考:デザインが生み出される過程を見える化するもの。技術や生産側の都合よりも先に、商品やサービスが世の中で活用されている姿を想像し、提案。思考の道具として有用
- 英語では、創造性の対語は、生産性。生産性の分母の労働量を減らすより、分子を増やすのに、デザイン思考が有用
- まとめとして、「デザイン」の言葉の意味の変化。ビジネスに合わない意匠法の改正。デザイン貢献度の見える化(デザイン費の問題)。デザイン人材を取締役以上に。労働量を減らす発想よりも、付加価値を増やす発想が、競争力を回復させる
というような内容です。
コメント
意匠法の改正について議論があり、経産省や特許庁の文書などが発信されていましたが、、パワーポイントで記載されているためか、いまいち腑に落ちませんでした。大学教授に文書でまとめてもらうと、意匠法の改正もこの文脈の中では必要なんだろうなと思えてきました。
上は、備忘録としてのキーワードのまとめ程度なので、是非、日経で確認していただければと思います。
デザインの定義は、商標の実務をしていても、国際分類のニース協定のAlphabetical Listの表現と、日本の分類表の記載の意味がズレているなと、かねがね思っていました。
脱線しますが、特許庁の日本の分類表は、日本分類重視のものから、国際分類重視のものに、改訂がされるたびに変化しています。
マドプロ出願などを振興するのが、これからの特許庁の行政目標だと思いますが、マドプロの利用をドイツ程度の利用率にするためには、中国式に、国際分類の個別表現を中心に再構成した方が早いと思います。
内外、外内の双方に、有用ではないかと思います。内々の人は、嫌がる可能性が高いですが。
デザイン経営、デザイン思考という言葉がキーワードというのは理解しましたし、意匠法の改正も必要とは思いますが、重要なのは、裁判所が、特許庁の意匠権のように、権利範囲を徐々に狭く解釈していくのではなく、サムソンとアップルの意匠訴訟の時のように、オリジナリティの高い意匠には、非常に強い権利範囲を認めることだと思います。
もとより、訴える側が必要です。自分のデザインについて、強い主張をする人が必要であり、アップルやダイソンのような強烈な会社やリーダーが出てこないと、意匠訴訟そのものが提起されないのかもしれません。
ただ、一旦、iPhoneやダイソンのデザインのレベルまで行くと、意匠は、特許よりも有用性が高いような感じがします。