Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

特許事務所で勤務した感想(その2)

特許事務所は「依頼書」が重要

 

明けまして、おめでとうございます。

 

今年は、1月に新年会がわりとあります。

特許事務所は、言葉は悪いかもしれませんが、完全に人海戦術の家内制手工業ですので、年末年始に9日間休もうとすると、12月にはその分の仕事をしておく必要があります。そもそも、外注先のようなものですので、後ろはありません。

 

まれに、相談からスタートしますが、基本は依頼書からのスタートです。依頼書を待つという感じです。

 

企業の商標担当の場合は、社内での依頼書のやり取りもありますが、それは、確認のために念のためにやり取りするものですし、その前に相談があることも多いです。

また、社員として、相談の前に、会社全体の動き、社長の方針、当該部門の動向、課題など多くの情報を既に持っています。

この点、特許事務所には、依頼書しかありません。当然、商標、商品・役務などは記載がありますが、それ例外の情報がありません。

 

すなわち、特許事務所には、商標の重要性、今後の展開などの情報がないないのです。唯一のコミュニケーション・ツールの依頼書にも、このあたりの記載がないことが普通です。

 

特許事務所でも、顧客企業の情報は、新聞・雑誌情報を中心に集めますし、企業の担当者との打ち合わせもあります。

しかし、依頼書頼みの情報量は、決定的に不足しています。

 

幸い今はWebサイトで、ある程度の情報が入手できます。これがなかった時代は、本当に、どうしていたのかと思います。

 

一つのコミュニケーション・ギャップです。

 

商標やブランドは、信用や名声が化体したものといいますが、別の言い方をすると、コミュニケーションの器・象徴・よりしろのようなものです。商標は、その情報を、法的な側面から観念したものです。

最終目的は、クライアントの、その先の顧客や社会との円滑なコミュニケーションですので、その法的な整理のスタートラインに周辺情報が不足していて、決して良いとは思いません。

 

この関係は、特許庁への出願書類でも同じです。出願するのは、マークと類と商品・役務だけです。

マークの説明、色彩の説明、特定ワードについての権利不要求、あるいは、商品・役務の説明をもっとさせる、積極的にするべきだと思います。

この意味でも、いわゆる登録主義と使用主義では、使用主義に軍配が上がります。

 

自分も企業の商標担当の時に、特許事務所には、依頼書程度の情報しか渡していなかったので、特許事務所や商標調査会社の方には、申し訳なかったと思います。

 

旧英国法系の国のように、識別性の判断を厳しくし、出願人に使用による使用による顕著性の立証を求めると、実際の使用証拠が出てきます。

また、実際に使用していて、特に何らの法的な問題も起こっていないということは、出所混同が生じない証拠にもなります。

 

少なくとも、この意味で、世間と特許庁の登録とのコミュニケーション・ギャップはなくなります。

 

スタートアップ企業の業務の場合は格別、既存の企業とは依頼書だけで繋がっているという奇妙な状態です。