さめている(客観的、感情移入が少ない)
特許事務所で仕事をして、クライアントの企業のご担当者とも親しくなり、企業のことも勉強して、商標出願をしたり、中間処理をやっても、企業にいたときとは、違う感覚があります。
それは、さめているという感覚です。非常に客観的に見ているのです。
社員の時は、当事者の商標担当ですし、弁理士であるということがらも、下手なことは出来ないと、相当、肩に力が入っていました。
この点、特許事務所の商標弁理士は、依頼を受けた後の仕事だけです。すなわち、依頼に至るまでの社内調整のややこしい仕事がありません。
あの件の進捗はどうなった? 俺にどうしろと言うんだ? お前は事業を潰す気か? というような事業部門からのプレッシャーは、企業の商標担当が引き受けてくれています。
期限管理一つ取っても、最後は企業の担当者に任せざるを得ないところがあり、企業の担当者がしっかり期限を守って頂ける場合は楽です。
反対に手取り足取り対応が必要な企業の場合は、大変なのだと思います。
どちらにせよ、感情移入は少なく、さめています。
これは、悪い方向に働くことも、良い方向に働くこともあり得ます。
特許事務所の弁理士は、アグレッシブに、どんどん進めないかもしれません。いわゆる指示待ちです。
しかし、カッカせずに、冷静に対応できるとも言えます。法的な仕事では、ここはメリットになる可能性が大きいように思います。
もちろん、商標弁理士も、アグレッシブに、勝つつもりで仕事をしないといけないというのは変わりません。
また、ダメなものは、ダメと、企業の商標担当にキッパリ言う必要はあります。
企業の商標担当が優秀だと、これは特許庁の審査官の説明用、これは相手方用、これは弁理士が事案の理解をするため用と、情報を整理して伝えてくれます。
そうなると、後は、特許庁用に書類を作るか、英語にして現地の弁護士に伝えるだけとなります。
調査や出願時にある、商標や商品情報のだけの依頼書では、情報量が少なく、コミュニケーションが十分とはいえないと書きましたが、反対に、中間処理や同意書取得交渉等の事件発生時は、依頼書に代表される書面ベースのコミュニケーション法が、案外、肩の力を抜く良い方法なのかもしれません。