Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

特許事務所で勤務した感想(その6)

国内担当と外国担当の違い

 

特許事務所の国内担当弁理士と外国担当弁理士の違いについて、感じていることです。

日本国特許庁がどのように判断するかは、審査官の個性によって、審査段階では多少の差はありますが、審判段階や審決取消訴訟段階では、だいたい予測可能な範囲に落ち着きます。

 

一方、外国への商標出願となると、日本を基準に考えると、理解に苦しむ、よくわからないことがあります。アメリカ、イギリス、中国、ドイツなどの主要国は、過去の実務経験や商標法の条文や法運用の情報があるので、ある程度は予測できますが、中南米の国などは、えっ、そんな制度なの?と驚くようなことがあります。

ドイツでさえ、最近は、EUTM中心になってしまっているので、十分に商標法や法運用の情報が日本で流通していないような気がします。

最近まで、仕事で大きなウェイトがある中国の法運用でさえも、細かい点になると、よくわからいことが多いのも事実です。商標のカラーの考え方や、不使用取消審判の実務なども、実際に現地代理人に確認しながら進めないと、間違えてしまうことがあるように思います。現地の運用も、どんどん変わるので、過去、こうだったからというのは、通用しない可能性もあります。

そのため、何度も、同じことを確認する必要があります。

先日、ある超ベテランの弁理士さんから、外国商標の仕事は、コレポンばかりだろうと言われたのですが、それはその通りです。

 

一方、国内担当は、通常は、企業でもある程度のことをします。大企業なら、国内商標の調査や出願は内製していることが多いので、特許事務所に来るのは、中小企業か、メーカーではない大企業(たとえば、金融、不動産、流通、運送、飲食などのサービス業)です。

メーカーなら特許部門があるので、そこで商標をやっていますし、外に出すよりは、内製する方が、コストが安いので、基本は内製します。これは、今に始まったことではなく、相当昔からの日本の実情です。

(大企業でも、商標調査や商標出願を外部の特許事務所に出す、アメリカとは違うように思います。)

 

では、メーカーの大企業が、特許事務所に来るときは、どういうときかというと、質問をしたいときです。自分達で考えて、どうも明確に分からない、さあ、どう判断しようという時です。

その場合、Aという考えと、Bという考えがあり、どちらにしようとかと迷っています。それを、判例や審決例や他業界の実務に詳しい人に確認したいと思って、特許事務所にきます。

そのときに、特許庁の審査官のいうように、出願して審査を待ってくださいでは、だいぶ先になってしますので、今、白黒が欲しいと思い特許事務所の門を叩きます。

結論は、究極的には、白でも黒でも良いが、今、結論が出したいというのが、その考え方です。その理由を、特許事務所の●●先生がこう言っていたというところに、置きたいのです。

 

特許事務所の●●先生も、主要な判決や審決を勉強して、だいたいの点は抑えておりますが、グレーゾーンはいつもあります。質問がグレーゾーンについてきたときに、✖✖ですと言い切るのが、国内担当の先生だと思います。

これまでも経験でも、極めて、パシッと言い切られることがあり、本当にそうかな?と思うことが多いのも、国内商標の先生です。ご自身の意見をもっておられることも多く、中小企業を中心にやっておられるためか、明確に白黒をつける傾向にあります。

大企業の知財部門は、どちらかというと安全サイドに倒して考えますので、大丈夫かとなり、セカンドオピニオンが欲しくなり、著名な先生のところに、また、お伺いに行きます。そして、同じ結論なら、これで良いとなります。

特許庁OBの弁理士知財高裁経験者の弁護士など、複数の人に鑑定書を書いてもらって、お守りにすることもあります。

 

一方、外国担当の先生は、過去、△△という事例もありましたが、正確には、現地に確認しましょうとなります。この現地代理人も、先ほどの国内の先生と良く似ています。皆さん個人の意見をもっているのです(そう考えると上手くいくという意見)。

よって、同じ国で、複数の代理人に意見を聞くと、違うことを言うことがあります。

複数の代理人に、同じ質問をしたり、納得のいかない点を細かく質問したり、あるいは、その代理人を日本に呼んで、こちらが裁判官になったつもりで、双方のいうことを聞き、こっちを採用しようということもあります(重要マターは、そこまでやることもありますが、通常はそこまではなかなかしませんが)。

 

渉外マター、特に、渉外事件の担当者は、根掘り葉掘り、石橋を叩きながら、仕事を進めることが多いように思いますが、このあたりに理由があります。