Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

今年の正月広告

トヨタイムズと西武そごう

 

新聞の正月広告は、その年の企業の姿勢のようなものを示すもので、各社非常に力を入れています。

広告宣伝の部門では、各社の何を言いたいのかだけではなく、コピーやクリエィティブを比較したり、壁に貼って意見を言い合ったり、しばらく話題になるものです。

 

朝日新聞と日経だけしか見ていないのですが、今年の新聞の正月広告では、トヨタトヨタイムズと西武そごうの広告が、ずば抜けていたと思います。皆さん、そうではないでしょうか。

 

トヨタタイムズは、新聞のセンターの2面に、太く、大きく、カタカナの赤字で、

「トヨ」

「タイム」

「ズ」

と3段に記載があり、

「未来を、どこまで楽しくできるか。」というキーメッセージがあり、さらに、編集長の香川照之さんが語るコピーがあります。

トヨタの社長が言っている、未来のモビリティ社会をつくる、ライフスタイルや街の在り方まで変える、クルマではなく未来をつくる。というような言葉を、編集長の香川さんが取材し、連載していくというような内容です。

 

toyotatimes.jp

 

TVCMも、見ましたが、香川さんの熱の入った演技でした。CMでも、「トヨ」「タイムズ」と「トヨ」の後で、明確に言葉を切っていました。

はじめは、「トヨタ」「イズム」かと思ったのですが、(まあ、それに掛けているのは明らかですが、一応は、)「タイムズ」は、「TIME」や「New York Times」のような新聞や雑誌のことであり、トヨタの考えていることを伝える、媒体という体裁にしてあります。

 

お金もかかっていますし、嫌がおうでも期待感を煽っているので、次回以降、どのような驚きのある情報発信があるのかと期待してしまいます。

 

トヨタ」「イズム」とすると、トヨタ主義になってしまい、唯我独尊で、不遜な感じもしますので、苦肉の策だったんではないかと想像しますが、面白いなと思いました。

 

もうの正月広告は、西武そごうの広告です。強いメッセージ性を感じました。

クリームの入った皿(クリームパイのイメージ)を、顔の中心に当てられた女性がキービジュアルで、「女の時代、なんていらない?」と、文章の最後にある「わたしは、私。」で締めらている広告です。

 

www.sogo-seibu.jp

 

活躍だ、進出だというもてはやされるだけの「女の時代」は必要ない。男も女もなく、一人ひとりが「私の時代」をつくることが必要としています。

これが最後の「わたしは、私。」とつながり、クリームの入った皿を顔に受けた女性のキービジュアルと対になっています。

 

この広告、ネット上では、だいぶ炎上しているようです。女性のキービジュアルの解釈は、意見が分かれそうです。ハッとするビジュアルであることは確かです。

 

 

話題になるだけでも、成功なのかもしれません。

 

この「わたしは、私。」のメッセージは、西武そごうとして、どのように事業に波及させていくのかなぁと思いました。

 

単なる、ビジュアルとコピーの正月広告で終わるのかもしれませんし、実際の事業に敷衍するのかもしれません。

事業に展開するのなら、相当高度なブランド戦略です。