2018年12月30日の日経に、中国の最高裁に設置される「知的財産権法廷」が、2019年1月から運用を始めるという記事がありました。
- 中国の最高人民法院(最高裁)は、2019年1月から「知的財産権法廷」の運営を始める
- 最高裁の専門部門設置で保護強化をアピール
- 主要16都市の地裁に知的財産権法廷があり、北京、上海、広州に知財専門裁判所がある
- 最高裁は、上訴案件を手掛ける
とあります。
コメント
以前にも、中国の知財裁判強化のニュースはありました。
11月30日の日経の絵を見て理解するのが、一番、良いようです。
従来の中国では、一審は、地裁レベルの中級人法院か、北京・上海・広州の知的財産専門裁判所で、二審は、各省にある高級人法院でした。最高人民法院は、判決確定後に重要証拠が見つかった場合などの再審を主に担当していたようです。
ただ、地方保護主義などの課題があったようです。
1月からも、 一審は、同じです。
しかし、二審は、二つに分かれ、著作権や商標は、従来通り、高級人民法院が担当し、特許・ソフトウェア・技術秘密などの技術的な内容が、最高人民法院の知的財産権法廷という専門部門になります。
これにより、技術系の知財裁判の、判断基準が統一され、内外差別や地域保護主義を防止でき、北京で裁判ができるので外資の負担権限になるとあります。
Wikipediaに、中国の二審制のことがでています。
中華人民共和国(中国)の裁判所は下から基層人民法院・中級人民法院・高級人民法院・最高人民法院の四階層
事件の種類によって裁判が開始される法院の階層が異なる
裁判は二審制
基層人民法院から開始される裁判は中級人民法院までで審理が終了し、高級人民法院や最高人民法院へ審理を移すことは認められない
ただし、日本の裁判所ではほとんど認められない再審が中国では広く適用されており、実質的には三審制に近いとも言われている
中級とあるので、高等裁判所かと思うと、そこは地裁というのが、日本人にはややこしいところです。
知財裁判は、中級人民法院からスタートするので、高級人民法院で審理が終了となるのを、今回は、技術系の知財裁判については、中級人民法院を飛ばして、最高裁に一元化するというのがポイントのようです。
北京の高級人民法院に、技術系の知財裁判を集めても、同じことができそうですが、最高裁に集めたという点が、知財裁判を重視しているという意思表示でしょうか。
著作権や商標権は、地方の高級人民法院に残りますので、地域保護主義が防止できるとはなっていない点が、課題ではあり続けます。
著作権や商標権の裁判は、件数が多いので、最高人民法院だけでは対応できないということではないでしょうか。
2016年の数字ですが、新興国等知財情報データバンクに次の数字があります。中国の民事事件の一審の新受件数です。
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/14593/
商標案件:27,185件
専利案件:12,357件
著作権案件:86,989件
技術契約案件:2,401件
不正競争案件:2,286件
その他知財案件:5,316件
合計:136,534件
著作権事件が、半分以上と、非常に多いのが特徴です。どんな内容なのでしょうか?