Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

特許庁長官の年頭所感

商標の審査促進

2019年1月4日付けで、特許庁のWebサイトに、特許庁長官の宗像さんの年頭所感が出ています。

2019年 年頭所感 ~特許庁長官 宗像 直子~ | 経済産業省 特許庁

 

中小企業支援、ベンチャー企業支援、デザイン経営というところが、目立ったところでしょうか?

特に、中小企業支援は驚きです。

今年4月から、全ての中小企業を対象に、特許料金を一律半減します。軽減手続には、定款や法人の登記事項証明書などの証明書は一切不要とし、抜本的に簡素化します。

中小企業の特許料金の半額化がメインですが、インパクトがあります。大企業の出願比率が高いので、実際の特許庁の収入にはそれほど影響しないと思いますし、将来、中小企業のビジネスが成功するなら、国家全体として十分ペイできるということなんだと思います。良さそうな施策です。

ただ、この短い年頭所感だけでは分からないのですが、外国企業はどうなるのか?と思いました。外国の中小企業も日本に特許出願することはありますが、これは対象外になるのでしょうか?

また、定款や法人の登記事項証明書などを不要にすることは、この軽減措置だけのものか、一般的なものか、どうなんでしょうか? 

 

デザイン経営については、

特許庁にデザイン経営を取り入れ、ユーザー目線で行政サービスの在り方を変えていきます。昨年8月、デザイン統括責任者(CDO)とデザイン経営プロジェクトチームを庁内に設置したところです。ユーザーの皆様の声を基に素早く施策の原案を作り、議論を行い、速やかに実施し、継続的に見直し・アップデートをしてまいります。

 とあります。

 

デザイン経営という言葉で、デザイン系の人が活躍しているようですが、一般企業であれば、CSなり、経営品質なり、ブランディングで整理しているような気がします。なぜ、デザイン経営?という気はします。

 

さて、商標については、

迅速な商標審査は、訪日外国人のインバウンド消費の鍵です。日本で買い物をする理由を尋ねた中国のアンケート調査では、半数近くが「ニセモノでないから」と答えています。一方、ニセモノの輸入差止件数は前年比で約2割増加しています。商標は出願しただけでは取締りを行うことが出来ません。登録されていることが必要です。こうした中、商標出願件数はこの5年間で1.6倍に増加し、審査期間が長くなっています。より迅速な審査を行えるよう、審査体制を強化してまいります。

インバウンドの増加の理由が、日本には偽物が少ないためというのは、理解できます。そして、そのため、迅速な商標権の設定が必要であり、最近、出願が増加しているので、審査体制を強化すると続けています。

 

しかし、模倣品の少なさは、商標権設定の迅速化とあまり関係ない問題だと思います。昭和の後半の審査に数年かかっていた時期の方が、今よりも、もっと模倣品の流通は少なかっただめです。模倣品は特許庁の審査ではなく、流通の問題です。

最近、模倣品が増えているのは、ネット販売や個人輸入の増加といった点が、一番の問題ですので、この点は、商標審査につなげているのは、少し強引な感じがしました。

模倣品対策は、ネットの監視(システム的なところも多い)やクレーム処理方法、水際規制だと思います。

 

それはさておき、審査体制の強化は良いことですし、昨年からニュースなっていました。 

nishiny.hatenablog.com

 

通常、業務の効率化は、ITや制度仕組みの見直しを先行させますが、今回は、それを超えて、人の手当を行っている点が注目点です。

 

特許庁の商標業務というと、商標審査となりますが、それだけではなく、法改正、商品・役務の記載方法などの商標制度運用の見直し、そして、それらのみならず、模倣品対策、水際規制、海外の特許庁との交渉、ブランディング、などと商標審査官出身者が活躍できる業務が拡大しているように思います。

そうなると、審査官の増員か、審査の外注化は避けて通れません。

審査官の増員は簡単にはできませんので、外注化は時代の流れではないかと思います。

 

この審査業務の一部の外注化、業務委託は、実際どのようになるのでしょうか?

弁理士が誰でも参加できるオープンな制度になるのか、特定の外郭団体などの活用となるのか、まだ、良く分かりません。