Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

ブランドと商標

非常に近いように思うが...

 

ここしばらく、外国への商標出願の仕事をしているので、商標やTrademarkという言葉を使ったり、見たりすることが多いのですが、しばらく前はブランドマネジメントをしていたので、ブランドやBrandという言葉を見る方が、断然多い時がありました。

 

ブランドという言葉は、American Marketing Associationでは、次のように定義されています。

A brand is a "Name, term, design, symbol, or any other feature that identifies one seller's good or service as distinct from those of other sellers.

ブランドとは、「名前、用語、デザイン、シンボル、その他の機能で、1人の売り手の商品またはサービスを他の売り手の商品と区別するためのもの」です。

この定義は、商標の定義とあまり変わりません。鍵となる言葉は、distinct(区別)の部分ですが、商標の理解と同じです。

 

一方、businessdictionary.comでは、次のように定義されていました。

Unique design, sign, symbol, words, or a combination of these, employed in creating an image that identifies a product and differentiates it from its competitors. Over time, this image becomes associated with a level of credibility, quality, and satisfaction in the consumer‘s mind. Thus brands help harried consumers in crowded and complex marketplace, by standing for certain benefits and value. Legal name for a brand is trademark and, when it identifies or represents a firm, it is called a brand name.

製品を同定し、競合他社と差別化するイメージを作成する際に使用される、ユニークなデザイン、サイン、シンボル、単語、またはこれらの組み合わせ。時間が経つにつれて、このイメージは消費者の心の中にあるレベルの信頼性、品質、そして満足度と関連するようになりますこのように、ブランドは、特定の利点と価値を支持することによって、混雑した複雑な市場で消費者を悩ましているものから助けます。ブランドの正式名称は商標です そして、それが会社を識別または表すとき、それはブランド名と呼ばれます。

 

こちらになると、ブランド流の定義になっています。Brand(ブランド)のLegal name(正式名称)は、Trademark(商標)という説明で、同じものであるとしていますが、内容的には多少違いがあるように思います。

 

まず、マーケティング協会の定義の、distinict(区別)は商標っぽい用語ですが、Businessdictionaryの方の定義には、ブランドではidentify(同定)し、 differentiate (差別化)するという言葉の違いがあります。単なる区別ではなく、差別化ですので、商標よりブランドの方が、高いレベルの識別機能を言っているように見えます。

 

また、identity(自己同一性)という言葉は、理解が難しい言葉ですが、自分とは何かを突き詰めているところがあります。アメリカの商標法でも使われる言葉ですが、Same(同一)ということが、非常に重要です。

ブランドでは、Similar(類似)は、それほど重要ではありません。ブランドでは、類似はあまり議論にしていないのです。この点は、しっかり認識しておく必要があります。日本の商標法の類似の3態様(この仕訳は英国発のようですが)に振り回されると、本当に大切なものが何か、見えなくなります。

 

同一ということにこだわる、商標の適正使用管理は、最近は、商標の仕事ではなく、ブランドマネジメントの仕事になっていますが、商標にも違和感はない部分です。

 

ただし、ブランドは、商標のように権利範囲の外縁(どこまで権利があるか?)にこだわるよりも、一つのことに徹底的にこだわるという面があり、どんどん、ブランドの内容を深堀をするイメージがあります。ブランドは内向きに深く考えるもののようです。exposure(露出)が、ブランドの特性のように見えますが、それは、ブランドのAwareness(認知)を得るたの手段であり、本質的には、このブランドはどうありたいのか?を考えるものです。すなわち、自分達はどうありたいのかを考え、それに向かって経営改善していく過程が、ブランドマネジメントです。

 

同じものを、Consistency(一貫性)をもって、Continuity(継続性)をもって、使用することで、ブランドが消費者のMind(心)の中に築かれるという考え方です。

Consistency(一貫性)は、商標ではあまり聞かない言葉ですが、ブランド用語としては、非常に重要なものです。

 

IdentityやConsistencyは、ブランドの内容面についても、ブランドの表現面についても重要であり、内容面については、ブランドの目指す姿を整理し、Inner Communication(社内浸透、啓発、教育)で、ブランドの目指すところを、従業員が理解するようにし、その従業員が、ブランドのContact Point(タッチポイント)で、顧客に対して発信することで、ブランドが形成されていきます。

 

一方、表現面についても、同一のものを一貫して、継続的に表現することで、消費者に正確に認識してもらえるようになるので、ブランド表現の統一は、重要なものとなります。

広告宣伝や製品デザインのクリエイティブは、時として、ブランドロゴを変形したりしたくなるかもしれませんが、ブランド面からは、そのようなことは許されません。

 

また、このブランドの定義には、Over time(時間の経過)というCotinuity(継続性)の要素もあります。この継続性の要素は、商標でも重要とされていたので、あまり差は感じません。

 

できるだけ、マーケティングの人と、商標の人が同じ言葉で会話することが、コミュニケーションを円滑にするように思います。

今一度、双方を理解する必要があるように思います。

 

●米国でのTrademark(商標)の定義例

A trademark is a word, phrase, symbol, and/or design that identifies and distinguishes the source of the goods of one party from those of others.

アメリカでは、商標法の中で、identifyを使っていますね。