不正競争防止法の商品形態模倣防止
パテント誌の2018年12月号と2019年1月号に、不正競争防止法の商品形態模倣防止の国際比較というものがあります。
まだ、Webサイトで公開されているのは、2018年11月号までのようですので、少し後になりますが、そのうちWebサイトで見ることができるようになると思います。
さて、2018年12月号には弁理士会の不正競争防止法委員会の平成29年度の委員長からの説明記事がありました。
商品形態模倣ですので、意匠(未登録意匠の保護、権利消滅後の意匠の保護、類似を超えた意匠の保護)、と商標(立体商標など)の双方に絡む論点で、アメリカではトレードドレスとしてランナム法(商標法)で保護され、イギリスなどの英国法系の国では、Passing off(詐称通用)で保護され、一方、大陸法では民法や不正競争防止法で保護されているものです。
トレードドレスやPassing offは、30年ほど前の大学生のときに、大学の国際私法の先生が、良く論文にしていた論点でした(Passing offは、30年経っても、十分に理解できていませんが)。
今回の特集は、弁理士会の不正競争防止法委員会から、各国の弁護士・弁理士に、論点を、明示して、寄稿をお願いしているので、法律を比較できる構成になっています。
アメリカ法とイギリス法は、日本法とだいぶ違うので、各々の法律での商品形態模倣の取り扱いを示すことに主眼を置き、不正競争防止法委員会の論点設定とは違う説明になっていますが、他国(韓国、ドイツ、スイス、イタリア)は、委員会から設定した論点に従い、回答をくれていますので、比較法として、分かりやすくなっています。
諸外国との比較考察は、日本弁理士会電子フォーラムにあるとのことですが、折角なので、パテント誌にも載せて欲しいと思いました(次号で出るのかもしれません。)
商品形態模倣の法的保護についての質問事項ですが、次のようなものです。
A. どのような法律で保護されるか?
B. 要件、判断基準、立証方法
・自他商品識別力は、必要か?
商標用語です
不正競争防止法で必要とされる、「周知性」の前提のようなものでしょうか
・混同のおそれは必要か?
特に混同は、購入時のみならず、購入前、購入後の混同も入るのか?
・価格差が大きい場合の、混同のおそれの判断は?
フランク三浦の事件に関係します
・機能的でないことは要件か?その基準は?
これも立体商標関係ですね
・不正競争防止法に一般条項があるか?
最近、韓国が一般条項を入れたと聞きましたので、日本の不正競争防止法でも、大きなの論点なのだと思います
・救済手段の内容は?
そもそも、海外では、知財権侵害に刑事罰がないことも多いですし、一般条項のような予測可能性で低いもので、刑事罰をというのは苦しいので、聞いておくべき質問だと思います。
・判例の紹介
となっています。
委員会の取り組みとしては、非常に良いものになっているのではないかと思いました。
今、意匠でトレードドレス(店舗外観)や画面デザインなどを保護することの検討が進んでいますが、経産省や特許庁の法改正担当者は、各国法制や実務を調べておられます。
弁理士も知っておくべきです。
おそらく、通常の商標、意匠などについては、法改正担当者よりも、渉外担当の弁理士の方が体感として、理解しているのではないかと思いますが、不正競争防止法のような、日頃あまりタッチしない案件は、このような取り組みをしていただくと助かるなと思いました。