不正な慣行(不競法4条3号)と一般条項(同3条)
昨日に引き続き、パテント誌の2018年12月号を読んでいます。今日は、ドイツの弁護士さんの論文です。
韓国の法律は日本に近かったので、論文も読みやすかったのですが、ドイツになると、少し違いがあるなという感じです。
ドイツでは、不正競争防止法があり、第3条に一般条項があります。
第3条
不正な商慣行の禁止
(1)不正な商慣行は違法である。
シンプルです。これが商品形態模倣に直接適用されるかどうかは議論があるようです。不競法の4条3号に、競争者の保護という条文があり、こちらが基本的に適用されるようです。
第4条
競争者の保護
次に掲げる場合には、不正が行われたものとする。
3.ある者が、競争者の商品又は役務の模倣である商品又は役務を提供し、その者が次に掲げる場合のいずれかに該当するとき。
a) 商品又は役務の商業的出所について購入者に回避可能な欺瞞をもたらす場合
b) 模倣された商品又は役務の評価を不当に搾取又は毀損する場合
c) 模倣に必要な知識又は文書を不誠実に取得した場合
この4条3号が、不正な慣行の認定基準になっているようです。
論文の説明では、まず、模倣自由の原則があって、次に知的財産権があって、その次に競争者が不正な慣行により模倣した場合は、当該商品の提供販売が禁止されるとあります。
不競法は歪みのない競争を確保するためのものであり、商品の保護は、その反射効とあります。
4条3号の条文が適用されるのは、商品の場合は、技術的な製品であったり、非技術的な製品であったりし、また、広告キャンペーンなどの役務でも良いとあります。
不正な慣行があるかどうかの判断基準で、最も重要なのは、「競争力のある独自性」があるかどうかということです。
需要者が商品の出所を認識できる場合に、この独自性があるとされるようです。商品形態の技術的な形態の場合、技術的機能を変えずに変更できる場合は、競争力ある独自性になりうるとあります。(※変更できない場合は、不競法では保護されない、特許法などの保護になるということだと思います。)
不正な慣行には、判例で、3つの類型があります。
a. 製品の出所についての回避可能な欺瞞(90%がこれ)
b. 名声の利用
c. 不誠実手段によるひな型の取得
そして、法的救済としては、差止、損害賠償、仮差止手続があるようですが、特徴的な説明だと思った点は、次です。
1.期間
差止などの出訴期間は、原告の情報入手から6ヶ月
損害賠償請求は、知ったときから3年
仮差止手続きは、知ったときから4週間以内
2.差止の請求権の終了
差止救済の請求権を終了されるためには、被告は、侵害行為の停止宣言書に署名する必要がある。違法行為を実際に停止するだけでは、不正競争行為が反復して生じる法的危険性を排除するのに十分でないので、侵害者による宣言書が必要とあります。
コメント
ドイツの不正競争防止法のイメージとしては、もっと一般条項が重視されるのかと思っていましたが、この論文を見る限り、個別の条文が適用されているようです。
ドイツの不競法は独禁法に近いようなところまで射程範囲にしており、解釈適用も難しいという話を聞いたことがあります。
商品形態模倣については、そうでもないのだと思います。
意匠権などの侵害ではなく、不競法ベースで訴える場合は、証拠集めや出張立証が大変そうではあります。
差止や仮差止の期間が、短いなと思います。相当、迅速な対応をしないと不競法による商品形態模倣の保護は使えないと思いました。
差止請求権を終了させないと、ずっと差止請求権が続くことは理解できるのですが、販売を終了していると、対象物もないので、差止請求権があることに目くじらを立てる必要はないように思いますが、ドイツ法がここで言っているのは、そういうことではなく、権利者の保護の確定のためのものなんだと思いました。
この部分、ドイツ的な感じがしました。