Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

グッチの黒いセーター

 黒人差別の批判受け、販売中止へ

2019年2月8日の日経(夕刊)で、グッチが黒人差別の批判を受けて、黒いセンターの販売を中止したという記事がありました。

同日付の日経電子版の方に、詳細な記事があります。

www.nikkei.com

  • 女性向けのタートルネックの黒いセーター。口元まで覆えて、大きな赤い唇で縁取られた穴がある

  • 黒人を侮辱していると批判の投稿。SNS上で「黒人の顔に似ている」「決して受け入れられない」

  • 同社は販売を中止。「深くおわびする」「今回の出来事を大きな教訓にしたい」

  • 2018年12月には、プラダのキャラクター製品に対し「黒人を侮辱している」との批判。販売中止

  • ドルチェ&ガッバーナ(D&G)は、アジア系女性が不器用に箸を使って、ピザやパスタを食べようとする映像が、中国人への差別表現として反感。中国で販売中止や、不買運動に発展

  • 騒動でブランドへの信頼感が低下すれば、業績に打撃となる可能性

 

コメント

ラグジュアリーブランドのデザインはチーフデザイナーのような人に任されていると聞きます。このグッチ、プラダ、D&Gの件も、チーフデザイナーの判断で出ているのでしょうか?

 

LVMHやリシュモンなど、巨大ラグジュアリーブランド・グループでは、管理系もしっかりしているようなので、何らかのチェックが働いても良いように思いました。

 

Wikipediaを見ていると、グッチは、仏ケリンググループに入り、その中核企業とあります。プラダは、創業家の3代目が経営者で、独立系とあります。D&Gも、独立系のようです。

3社ともイタリアの会社です。

 

グッチがケリンググループにいるということですので、巨大ブランドグループ傘下であっても、案外、事前の受容性チェックなどはしていないということになります。

 

通常、メーカーであれば、販売前に、品質チェックの関門があります。おそらく、これらの会社でも、材料や縫製など、機能面のチェックはやっているのだと思います。

 

商品ネーミングであれば、外国商標調査の段階で、現地の商標の代理人弁護士が、言葉の含意で悪い意味があるとか、俗語で卑猥な意味があるとかのチェックがあるのが通常です(これは、サービスのようなものです)。弁護士は、ネーミングの専門家ではないですが、法律家=常識人であることが多いので、参考になります。

また、インターブランドのようなグローバルなネーミングコンサルでも、比較的良心的な価格で、各国のバーバルの専門家のチェックを受けることが可能です。こちらは、売上ににつながるコメントがあったりします。

 

おそらく、商標で問題が生じないのは、このようなチェックがあるからです。

 

一方、イタリアの3つのファッションブランドでは、黒人やアジア人の社員が少なかったためか、内部でチェックが働いていません。

もし、製品を出す前に、商標のように、各国の弁護士か、ブランドの専門家、今回であれば、黒人やアジア人の専門家に、相談があれば、何らかのコメントが出て、事前にストップできたかもしれないと思いました。

 

日常、ルーチンワークとして、外国商標調査をやっていますが、含意のチェックのメリットは、ブランドの毀損防止にとっても、案外大きい効果があると思います。