Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

土地の相続の登記義務化

2020年に法案提出

2019年2月8日の日経(夕刊)に、法務省が所有者不明の土地の増加に対して、民法不動産登記法を見直し、相続登記の義務化・所有権の放棄を認める・遺産分割の話し合いができる期間の制限、などを導入するという記事がありました。

土地の相続登記を義務化 所有者不明問題で法改正へ :日本経済新聞

  • 所有者不明の土地は、2016年に全国で約410万ヘクタール。2040年には約720万ヘクタールへ
  • 相続人が決まらない、決まっても登記しない
  • 権利関係が外部からわからない
  • 登記を義務化。登記しない場合は罰金を視野
  • 現在は、登記は任意
  • 遺産分割の話し合いの機関も、3年、5年、10年などに制限する案
  • 土地の所有権の放棄を認める(現在は、放棄を認めていない)。放棄の条件を議論

コメント

近くに、所有者不明で放置されている家が2件あります。そのとなりの同じような建物は、綺麗な家に建て替えられているのですが、その2件だけは、戦後すぐの雰囲気のまま残っています。所有者が不明で不動産開発ができないと聞きました。

 

日本の国土は、約3800万ヘクタールで、不明が410万~720万ヘクタールですので、いかに多くの土地が所有者不明なのかが分かります。

放棄が出来ないとうことは、知りませんでした。

今回は、相続時の不動産登記を義務付ける話が、中心のようです。

 

日本では、登記に公信力を認めていません。

この関係は、次のように説明されています。

https://www.homes.co.jp/words/k5/525000999/

 登記上の表示を信頼して不動産の取引をした者は、たとえ登記名義人が真実の権利者でない場合でも、一定の要件の下で、その権利を取得することが認められるというのが、不動産の「公信力」です。
しかしながら、日本の登記には公信力が認められていません(動産の場合は認められています)。ですから、登記簿や登記記録などを信頼して、登記上の所有者から不動産を買い取っても、本当の所有者に対しては権利を主張できません。不動産に「公信力」がないのは、登記官が現地調査を行わず、文書だけで登記を処理しているので、取引の実態を把握できないからだといわれています。

 この点、ドイツでは登記の公信力が認めらています。

公信力[ドイツ登記制度](こうしんりょく[ドイツとうきせいど])とは - コトバンク

土地登記簿の内容が不真実であっても,法律行為によって善意で権利を取得した者の利益のために,真実とみなされる (892条I項) 。(中略)
真の権利者が第三者の善意取得を阻止するためには,登記簿の更正を求めて自己の権利を正当に登記しておくか (894条以下) ,登記簿の真実性についての「異議の登記」をしておかねばならない (892条I項1段但書) 。
日本の民法が、フランス民法を基礎にしているので、このあたりが残ったと聞いています。
やるなら、ドイツ法までやってしまうと良いのではないかと思いましたが、そこまではならないようです。
個人も会社も、どんどん生まれては消えますし、住民基本台帳マイナンバーカード、会社法人等番号(法務省)と法人番号(国税庁)というようなもので、法務局のデータと、電子的に紐づけ、なんとかITの力で、整理できないかと思いますが、そこまではできないということなのでしょうか。
(日本の特許庁に商標出願するときに、会社登記簿の提出は不要ですが、)中国では商標出願に登記簿謄本が必要です。この意味では、中国の商標制度は、真の権利者を特定するという面で、少し進んでいるのかもしれないと思いました。
ちなみに、中国の個人が商標出願できるかについては、紆余曲折があり、個人は商標出願を制限されていた時期もあるようですが、現在は、個人事業主には、商標出願の門戸が開かれています。ただし、個人事業者謄本のというものが必要なようです。

個人の商標出願資格についての変遷過程の総括 - 上海博邦知識産權服務有限公司

このサイトの解説、なかなか面白いです。

 

仕事ではやったことはないですが、外国人の自然人は、パスポートや住民票などが要求されるようです。

 

中国が自然人を制限する理由ですが、商標は、商取引上のものであり、自然人は、商取引をする場合に初めて商人になり商標の主体になることができるという、昔、商法で習った「商人」の概念に近いなと思いました。

 

登記簿や、パスポート・住民票の提出となると、手間かかりますが、手間をかけずにやると、日本の不動産登記のように、財産の多くが、権利者不明になりますし、手間をかけ過ぎると、迅速性が阻害されます。

 

日本の特許庁でも、外国出願人の場合は名称のカタカナ表記でさえ色々ですし、権利主体の変化をフォローできていないので、一見、登録主義と云われて、登記の公信力のようなものがあると思われる日本の商標制度も、真の権利者は、登録簿通りではありません。

更新時や、権利行使時に名義変更等をすれば良いということで、それまでは、放置されているものも多いと思います。

そのような権利で、税関登録や警察が動くことはないの少ないので、問題はないのかもしれませんが、世間が権利として尊重する=同一類似の商標の採用は避ける、というのも、奇妙な感じはします。

 

海外のように、商標調査時に、使用実態をちゃんと確認するようにした方が、良さそうです。