Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

Tropicanaの事業移管

合弁会社方式からライセンス方式へ

2019年2月18日のキリンのニュースリリースで、現在合弁会社であるトロピカーナの事業が、ライセンスビジネスに切り替わるという記事が配信されています。

日本におけるトロピカーナ事業の新体制移行について|2019年|ニュースリリース|キリン

内容は、

  • キリンビバレッジ株式会社KBC)と PepsiCo,Inc.(ペプシコ)の子会社Tropicana Products Inc.(TPI)は、日本のトロピカーナ事業に関して、新体制に移行

  • 日本におけるトロピカーナブランドの事業管理やマーケティング活動を行うキリン・トロピカーナ株式会社(KTI)は、本年1月に従来の合弁会社方式から、KBCの100%保有に変更。(従来の出資比率は、KBC50%:ペプシコの子会社であるFrito-Lay Netherlands Holding B.V.50%だった)

  • 同時にトロピカーナブランドを日本で展開する各種権利をTPIがKBCに付与するライセンス方式に切り替える
  • 4月1日には、KBCがKTIを吸収合併し、KTIが持つ機能をKBCに移行

  • トロピカーナは100%果汁飲料の小売販売量世界No.1ブランド

  • 世界60カ国以上で愛されている

  • 日本では、1991年にKBCがパートナーとして事業を開始

  • 近年では、不足する栄養を手軽に補える「エッセンシャルズ」の展開など、トロピカーナブランドの理念に基づいた様々な商品供給。

  • 社会環境や市場環境の変化に迅速に対応し、ブランド力の更なる強化と、事業の収益性を高めるために、合弁会社方式からライセンス方式への事業形態の変更を行う

 

コメント

 

トロピカーナは知っているし、よく見るけど、キリンがやっていたのか?という感じです。

ネットには、当該合弁会社の2017年ぐらいまでの決算数字が出ていますが、トロピカーナの日本事業自体は、順調だったようです。

鉄分とか、ミネラルとか、栄養素の入った、機能性ジュース「エッセンシャルズ」などが好調だったようです。

このエッセンシャルズは、キリンの事業方針にある、食と医をつなぐ製品として、キリンとしては、取り込みたい事業ではないかと思います。

 

さて、合弁会社で、出資比率50%、50%という点ですが、50:50は、どちらが主導権をとるのか不明な数字なので、51を取りに行くのが基本とは思いますが、世の中には、50:50という合弁会社が一定比率であるように思います。

キリンがパートナーなら間違いない、というところでしょうか。

 

既に1月には、合弁は解消しており、4月にはその会社もキリンビバレッジに吸収されるようです。この点は、キリン本体への取り込みです。

 

トロピカーナは、ペプシコの子会社とありますが、中間に、フリトレー(ペプシコの4部門の一つとありました)が入っているのかもしれません。

日本でペプシは、サントリーがやっていると思います。サントリーとキリンは直接のライバルですので、関係がややこしいですね。合従連衡です。

 

従来の合弁会社にも商標ライセンスはしていたと思いますが、料率などが変わるのかもしれません。例えば、従来は、配当中心で商標ライセンスは低額であったとすると、トロピカーナが側としては今後はライセンス料だけとなりますので、料率を上げたくなります。

 

合弁会社方式から、ライセンス方式に移行することで、迅速な対応ができるというのは確かです。双方の親会社にお伺いを立てる必要があったのが、一つで良くなるためです。

合弁会社で、50:50なら、二君に仕えていることになりすので、2つの親が違うことを言えば、どうすれば良いのか?ということになりますが、親が一つなら方向性は明確です。

 

ただ、一般論としてですが、合弁は解消するにも時間がかかりますが、ライセンスは解消するさのが楽です。ここからすると、ライセンスだけというのは危ない面があります。

バーバリー三陽商会ヤマザキナビスコの件、など、ライセンスビジネスは、いつも不安がつきまといます。

ペプシコ、キリンは何を考え、直接、関係ないですが、サントリーは何を考えているのだろうかと思います。

 

Tropicanaブランドの日本の商標権者は、Tropicana Products Inc.(TPI)のようです。ここは素直なのですが、オランダのフレトリーが、これまでの合弁の直接の相手方だったという点も、面白い点です。

 

TPIの直接の親会社なのかもしれませんし、商標権のライセンス機能を、ここに集約している可能性もあります。欧米企業お得意の、税務戦略と一体になった、商標契約のハブになっているのかもしれません。

 

日本人はライセンスが苦手です。ここを克服するには、知財部と法務部、特許事務所と法律事務所の融合が必要です。特許庁から知的財産庁への脱皮も必要だと思います。