立体商標として登録
2019年2月21日の朝日新聞デジタルに、キリンの「氷結」の缶のデザインが立体商標として登録になったという記事がありました。
- 「氷結」の容器に使われる凹凸模様の「ダイヤカット缶」が、立体商標に登録
- 発売から19年目での登録
- 冷涼感ある現代的なチューハイとのコンセプトを表現するための形状
とあります。
関連で、キリンのニュースリリースがあります。
https://www.kirin.co.jp/company/news/2019/0221_06.pdf
文字や図形などが表示されていない、アルミ缶だけのデザインでの登録であり、酒類・食品業界において、非常に珍しい事例とあります。
コメント
最近、キリングループの活動を書くことが多いのですが、面白いことをやっているなと思います。本日は、立体商標です。
氷結は、缶のダイヤモンドカットも面白いのですが、蓋をあけたときに、全体が膨張して震える、あの動きも面白いので、動き商標でも出願すれば良いのにと思います。
立体商標が1996年から導入され、動き商標などは2015年から導入ですので、これからなんでしょうか。
さて、立体商標や動き商標などの新しい商標は、文字や図形で、既に十分に識別できるものを除いて、はじめは識別力なしとして、使用による識別力の獲得の立証が求められます。
立証にあたっては、多くの使用証拠の提出や、場合によっては、アンケート調査が必要になります。
J--Plat Patで確認しました。まだ、登録番号はついていません。商願2015-003096とあります。最近の出願です。審査経過を見ると、相当回数のやり取りをしています。
使用による識別力の獲得の立証は、通常の商標出願に比べると、大変な労力がかかるのですが、これこそ商標制度の本来の姿だなあと思います。
商標で一番重要なものは、商標自体の識別力であり、その立証は実際の使用実績であり、第三者の権利との抵触は、その次のテーマです。それにも拘わらず、抵触性の類否判断のみに汲々としているは、いかがなものかと思います。
抵触性の判断は、欧州のように当事者の異議申立に任せて、当事者で判断することも可能なぐらいのマターです。これを行政が判断すること自体、時代遅れの感があります。
会社法の改正で、類似商号の審査がなくなりましたが、これが原因で商号で、問題が起きたということを聞いたことがありません。おそらく、不正競争防止法が強化されているために問題が生じないのだと思いますが、従来の類似商号の審査は、一体何だったのかと思います。
商標の場合は、同意書制度を導入するというのが、解決の方向性ですが、民間の要請が高いにも拘わらず、なぜか特許庁は導入しようとしません。(民間という言葉は、お役所用語です。企業の人には違和感がある言葉です)
同意書制度の代わりに、日本では使用許諾が代用されていますが、あれはQuality Control(品質管理)を前提とする、世界的に一般的な使用許諾ではなく、日本の使用許諾を品質管理を無視してしまったために可能になった、同意書制度の代替物です。
企業では、通常の技術ライセンスが付随する本来の趣旨の使用許諾と区別して、これを商標の許諾被許諾と分類しています(貸し借りです)。名板貸しの禁止に近い話なので、筋が良いものではありません。
海外の人に理解されない制度は、早晩、終わりが来るのではないかと思います。同意書の代替として、一旦、商標権の名義を変更して、権利を取得してあげて、返却する、アサインバックがあると云われますが、アサインバックは海外の人に説明のが大変ですし、日本人の自体が、奇妙な考え方を持っていると誤解されないかと心配します。
さて、本題に戻って、立体商標や新しい商標の識別力を慎重に判断するのは、本当に良いことだと思います。これこそ、商標制度です。
この権利取得に100万円かかっても、マス宣伝や、ニュースリリース効果を考えると安いものです。