アップルとクアルコム
2019年3月3日の日経で、アップルが、クアルコムとの特許紛争の影響で、5Gのスマホを出せないでいるという記事を見ました。
アップル、沈黙の5G戦略 中韓勢に出遅れ (写真=ロイター) :日本経済新聞
内容は、
- MWC19バルセロナで、5G対応のスマートフォンが発表
- 2019年から製品投入
- 一方、アップルの5Gは投入計画が明らかにされていない
- 理由は、クアルコムとの特許紛争で、5G対応の半導体の供給を受けることができないため
- アップルは、クアルコムの特許使用料の設定が不当に高いと、2017年1月に提訴
- 世界各地で知財訴訟合戦
- 5G対応の半導体を作れるのは、クアルコムだけ
- 代替のインテルは開発が遅れている。アップルのスマホは2020年になるだろう
というものです。
特許紛争のことについては、次の記事があります。
クアルコムとアップル、知財侵害巡る陪審裁判始まる (写真=ロイター) :日本経済新聞
- クアルコムとアップルの訴訟合戦は、2017年1月から
- 端末価格に連動してライセンス料を決めるクアルコムの商慣習は不当との主張
- クアルコムは和解を模索。アップルが拒否
- 2018年秋に発売した「iPhone」の新機種ではクアルコムから調達していない
- 現時点で発売が公表されている5Gスマホはほぼ全てにクアルコムの半導体が採用
- OSは全てグーグルの「アンドロイド」
- 2社は「アップルの敵」という点でも利害が一致
- クアルコムとグーグルがからんだ端末は早ければ今年の5月から発売
- iPhoneの5G空白期間中に関連するソフトを充実させて、アップルを出し抜きたい
- アップル優先のアプリ開発会社を、巻き込む戦略
というようなものです。
コメント
クアルコムの特許訴訟には門外漢なのですが、クアルコムの半導体を使う場合は、ライセンス料の問題はないかと思いました。
しかし、代替調達先のインテルなどの半導体を使うことが必要であり、その場合にクアルコムの特許は使わないといけなくなります。代替して調達した、半導体の価格に特許使用料をかけるのか、製品全体なのかは、確かに論点です。
さて、アップルは、2019年のこの1年が勝負になる構図です。Googleとクアルコムが、この1年に5Gで圧倒的に勝てば、両社が優位になります。
一方、アップルは、この遅れは、挽回できるものであり、あまり問題ではないと思っているのかもしれません。
特許紛争は、この勢力争い全体の一面ですが、直接の原因ですし、その結果はターニングポイントになります。
アップルは、事業の遅れにつながっても、クアルコムとの係争を続けるのは、それだけ、クアルコムの特許使用料が、高いということなんだと思いました。
それにしても、アップルは、知財紛争が多い会社だなと、改めて思いました。この訴訟好きの感覚は、ほとんどの日本企業にはありません。
日本企業も、訴訟を企業運営の手段とすることに関心がない訳でないのですが、裁判はコストかかるとか、結果不確かであるとか言って、当事者同士の交渉はやりますが、訴訟を好みません。
権利取得に、多大のコストをかけることには、案外平気なので、お金だけの問題ではないのだと思います。
訴訟嫌いの原因は、知財部と法務部が分かれていることも大きな要因と思いますし、知財部が権利取得中心であることも要因ですし、弁理士に訴訟代理権を付与しなかったことも要因です。
知財高裁は裁判が少ないのが課題のようですが、このあたりの全体の改革がないと、訴訟を企業運営の手段に取り込むことができないように思います。