Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

英語で知財訴訟

国際裁判部

2019年3月15日の日経に、知財裁判が英語で訴訟可能になるという記事があります。

知財、英語で訴訟可能に 「国際裁判部」新設検討 :日本経済新聞

内容は、

  • 特許侵害などの知財訴訟で英語の使用を認める「国際裁判部」の設置
  • 2019年中に提言まとめ、法改正へ
  • 協議会(知財司法に関する経済界と私法関係者のダイアログ)で、議論
  • 国際裁判部の新設。知財高裁の専門部に
  • 外国企業は日本語で審理する日本の裁判所の利用に慎重
  • 渉外紛争は、日本以外が舞台になる
  • 日本企業は、日本で解決したい
  • 日本語で裁判をするには、裁判所法の改正が必要

コメント

裁判所法の改正となると、大変だなあという気がしますが、これは必要なことだろうと思います。

今回は、基本に外国人が原告になり、日本の裁判所で、英語で訴訟進行ができるようにするためのものだと思います。

確かに外国人の立場に立つと、何を言っているのか分からない日本で、訴訟が進行するのは、非常に不安なものがあります。

 

日本で、外国商標の仕事をしていますが、英語なら、多少時間はかかっても出願から中間から異議や審判まで、全て理解できるのですが、ドイツ語やスペイン語、韓国語、その他の言語は、翻訳ソフトで理解できることもありますが、簡単には理解できません。現地代理人からの英語書面だけが頼りです。これが、口頭審理となると、全く理解不能だと思います。

裁判の途中で、翻訳してもらう訳にもいかないでしょうし、仮に法廷に出廷していたとしても、後で弁護士に聞いて、理解するしかありません。

 

日本が舞台の事件(日本の権利が問題になる事件)でも、英語で議論が出来るとなると、外資系企業による日本での知財裁判が増える可能性は、大です。

日本企業が、外国の企業を訴えるときに、被告の住所地の外国裁判所で、なれない日本法の議論をしてもらって判決を得るという方法もありますが、その結論が、本当に日本法の解釈として正しいのか、微妙なものも多いと思います。

それなら、日本の裁判所で、外国人も参加しやすい英語で訴訟をし、判決を出してもらい、その判決を外国の裁判所で執行してもらう方が、手っ取り早いですし、ある程度の大手が相手になると思いますので、妥当な判決なら、執行でもめることも少ないのかもしれません。

 

最近話題の東京に設置するという仲裁裁判所も、当然、英語が使えると思います。こちらとセットで、東京で知財の渉外訴訟、争訟が集まるのは良いことだと思います。

 

nishiny.hatenablog.com

 

ただ、韓国では、すでに英語での訴訟を受け付けています。 

nishiny.hatenablog.com

この面で、韓国は、進んでいるなと思いました。

 

さて、問題はその先で、グローバル企業の争訟は、日本の権利だけではありません。商標調査をしていても、ある商標を調査すると、各国で同じ権利者の同じ権利が引用例に上がってきます。このとき、欧州においても、権利判断は各国毎ですので、各国の代理人で類否の解釈などが異なります。

このような各国毎の権利解釈の違いのような点も、グローバルな争訟では検討が必要です。

 

仮に、日本、韓国、米国の事件があったとして、

日本の権利は日本の裁判所で、各国の権利は韓国の裁判所で、米国の事件は米国の裁判所でというのではなく、企業が求めているのは、ワンストップで、各国の判断もできて、総合的な判断ができるところです。

こちらは、仲裁裁判所の役割でしょうか。

 

ともあれ、日本も大きく動き出しているなと思います。