あと2つです。今日は「エマックス事件」です。
特許が無効になるときは、特許庁の無効審判を待つまでもなく、侵害訴訟において無効理由の存在を理由とする権利濫用の抗弁が可能になったいうキルビー特許事件があります。
それを受けた、平成16年特許法改正で、権利行使の制限規定が新設されて、侵害に対する抗弁事由として法定化され、商標法でも準用されています(39条、特許法104条の3)。
本判決は、商標法の除斥期間のある無効理由については、除斥期間経過後は、この抗弁を主張できないと判示しました。
この点、学説が2分されていたようですが、先生は、特許法104条の3第1項の規定が、「特許無効審判により無効にされるべきものと認めらるとき」とあることから、除斥期間経過後は、今回の最高裁判例と同じ立場だったようです。
一方、本判決は、周知商標の使用者への権利行使については、権利濫用(民法1条)の抗弁ができるとしています。先生は、これはキルビー特許事件判例が示す、衡平の理念を重視したものとだろうとします。
そして、本判決の射程範囲は、除斥期間がある他の無効理由にも及ぶだろうとします。
コメント
商標協会の国際活動委員会で、本件を担当された広瀬弁理士から、直接、話をお聞きしたことがあったのですが、複雑な事案だなという印象だけが残っています。
「エマックス事件」と検索すると、TOPに次の判例解説がでてきました。話を聞かないと理解できないなという感じです。
無効審判請求の除斥期間を途過した場合であっても権利濫用の抗弁の主張を認めた最高裁判決(エマックス事件)について – イノベンティア
この事件については、もう少し勉強しないといけないなというのが、素直なところです。
検索結果の2つめに出てくる、宮脇先生の論文も、ちょっと難しいなと思いました。
https://www.inpit.go.jp/content/100863979.pdf
ただ、最高裁は、キルビー特許事件判決よりも、ポパイマフラー事件を引いているとあたりが、商標法らしくて面白いなという感じがしました。商標法では、特許よりも権利濫用が問題になるケースが多いようです。
小僧寿し事件の、商標法38条2項(現3項)などの特許法を借用した作った規定でしたが、この39条(特許法104条の3)など、そもそも、商標に合致していない面があるのかなという感じもしました。
以前からある議論で、特許法の準用を一切やめて、商標法をつくるべきというものがあります。読みやすくなるというのが、一番のメリットですが、商標法と特許法の違う点を明確にするためにも、その取り組みは価値がありそうだなと思いだしました。
法案作成の担当官としては、面倒なんでしょうね。