Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

令和の「令」の意味

「不寛容を超え調和を」を読んで

2019年5月3日の日経に、新元号の令和の意味についての文章がありました。社会部長の方の高野さんが書かれた文章です。

(新時代の日本へ)(2)不寛容を超え調和を 社会部長 高野真純 :日本経済新聞

  • 白川静氏の「字通」によると、「令」の字の象形は、人がひざまずき、神のおつげを聞く様を表す。「命ずる」と共に「よい」という意味がある
  • 平成は、2つの巨大地震など、災害の時代
  • インターネット空間に不安を感じる人が6割で、繁華街や路上を上回る
  • 格差の広がり、外国人の受け入れ。日本は、多様な背景や考え方を持つ人が増える
  • 家族や地域の連帯がうすれたが、災害では「共助」の意識は育った
  • 分断が懸念される社会で、不寛容を克服し、調和に至ることは、命じされてではできない
  • 「令」を漢文調に「たらしむ」と読み、個々人の主体的な「和たらしむ」が重要

というような内容です。

 

コメント

「令和」の意味について、政府は、「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ、という意味が込められております。」としています。

新元号の選定について | 首相官邸ホームペー

 

BBCが「令和」の意味を「order and harmony」と訳したのを、外務省が「beautiful harmony」と訳して、現在、政府の公的英訳のようなものになっています。

新元号は「Order and Harmony(令和)」 BBCの英訳が「かっこいい!」と話題に : J-CASTニュース

令和は「beautiful harmony」 外務省が対外説明を統一 :日本経済新聞

 

「令」という漢字は、「命令」「大宝律令」「令外官」「御令室」などでは見ますが、「令」の文字単独であまり使わない文字です。

個人的には、「法律」や「決まったこと」、という意味なのかと思っていました。

 

Webの漢和辞典を見ると次のようにあります。

「令」の部首・画数・読み方・筆順・意味など

小学校4年生程度で学習する文字のようです。意味は、

  • 「いいつけ」「上の者からの指示」
  • 「おさ」「長官」
  • 「よい」「すぐれた」「立派な」「相手の親族を敬っていうことば」
  • 「のり」「おきて」「決まり」「法律」
  • 「しむ」「せしむ」「令AB~」の形で、「AをしてBせしむ」と読み「AにBさせる」という意味

この社会部長の説明は、最後の「しむ」「せしむ」の意味です。

外務省の説明は、「よい」の延長の意味だと思います。

「令」を、「しむ」「せしむ」的に読む場合、その名宛人は国民だと思いますので(ひ、り抜けていますが...)、「国民をして調和せしむ」となり、記事の筆者の解釈に近くなります。

 

日本人は「和」を重視するといわれ、なかなか結論が出ないけれども、一旦結論が出たら、一致団結して目的達成に向かうと言われています。今更、「和」と言われなくとも、すでに、国民に深く根付いた価値観という気もします。

 

しかし、有名な、聖徳太子憲法12条の「和を以てと貴しとなす」という言葉ですが、うがって見ると、当時(飛鳥時代)は、有力者が群雄割拠で、なかなか「和」というものがなく、そのため「和」が大切としたという解釈もありえます。

 

確かに不寛容の時代、多様性が高まる時代だからこそ、「和」が重要ということは分かる気もします。

 

そう考えると、この筆者がいうように、「和」が薄れている、重要なので、今一度、各人が「和」を考えましょうという意味で捉えても良いのかもしれません。「think harmony」ぐらいのイメージです。