Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

誤訳の案内板

翻訳ソフトの問題

2019年5月11日の日経夕刊に、観光関係で、翻訳ソフトを利用した誤訳が発生し、訪日客が困惑しているという話があります。

誤訳の案内板、訪日客が困惑 退出口に「出て行け」 :日本経済新聞

事例として、紹介されいるのは、

  • 大阪スカイビル:「お帰り口」→「你退出」(「あなたが出ていけ」の意味に)
  • 東京地下鉄:「走路分散注意力是非常危険的」→直訳すると、「歩きながら注意力を分散させるのは危険」(歩きながら「スマホを操作する」ことを注意したかった)

大阪地下鉄は、2018年9月に、自動翻訳ソフトを使い、日本語のサイトを、英語、中国語、韓国語、タイ語に翻訳して閲覧できるようにしたそうですが、次のような問題が生じ、外国語対応のホームページを閉鎖したとあります。

  • 大阪地下鉄:「堺筋線」→「Sakai muscle line」       
  • 大阪地下鉄:「天下茶屋」→「World Teahouse」

大阪とは、明示されていませんが、記事には次の交通関係の事例もありました。

  • 3両目:eyes3
  • 遺失物センター:Forgotten center
  • 小人:dwarf(こびと)

とあります。

 

看板会社の社長は、誤訳は訪日客の感情を逆なでするとコメントし、

ある中国語の教授は、自動翻訳は制度が向上しているが、専門家やネイティブのダブルチェックが必要とします。

 

コメント

まず、中国語などの英語以外の言語は、見ても分かりませんので、自動翻訳に頼らず、専門家やネイティブに聞くしかないなとい感じです。

 

日常の商標の業務でも、多言語を目にしますが、たいていの場合は、重要なところは、英語か日本語に翻訳してくれています。

英語の情報が十分でなく、Google翻訳で、チェックしたことがあるのは、ドイツ語、スペイン語トルコ語の中間書類ぐらいです。

 

今は、英語以外の言語でも、安く翻訳してくれる会社も多くあると思いますので、看板を作るようなときは、安易に素人が翻訳ソフトで対応せずに、翻訳会社を頼るべきだと思いました。

 

英語についてですが、例えば、Google Chromeで英語のサイトを見るときに、設定を少し変えると、日本語に翻訳して表示してくれます。

例えば、大阪地下鉄のサイトは、今は、日本語サイトしかありませんが、それを設定を変えて、英語で表示を選ぶと、

と出てきます。記事と同じような状況です。

 

Google翻訳で「3両目」と単語で入れると、「eye3」と出てきました。これは違います。一方、同サービスで、「遺失物」は、「Lost and found center」と出てきます。これはこれで良さそうです。

「小人」の「dwarf」はそもそもあまり見たことのない単語です。 "Snow White and the Seven Dwarfs" (白雪姫と7人のこびと)のdwarfです。

 

少し前から、機械翻訳の方法が変わり、翻訳の精度が大幅に向上していますが、文章の中での翻訳ではなく、単語単位で翻訳すると、文脈がつかめないので、使用例の多いものが出てしまい、意味が分からなくなるということでしょうか。

 

大阪地下鉄は、複数言語にするために、一挙に自動翻訳ベースのシステムに変更したことが問題だったのだと思います。

個人が設定を変えて、自動翻訳した場合は、オフィシャルに供給されている日本語サイトを、自分で翻訳ソフトで翻訳しているので、責任は個人にあります。

大阪地下鉄が、日本語以外は、自動翻訳であり、間違っていることもありますよと、注意書きを入れる方法もありますが、公的な大阪地下鉄が供給していると、どうしても、公式の説明のように見えるので、ミスのもとになるという点が問題なのだと思います。

 

自動翻訳であることを認識して割り切って使う部分と、公共交通機関のように、お金をかけて翻訳すべき部分があるようです。

 

一般に、ドイツ語、スペイン語圏は、少し不親切なところもあるのですが、日本語の代理人は、海外の人にどう映っているのでしょうか?