Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

中小企業の知財強化

特許法改正と独禁法の違反事例のまとめ

2019年5月17日の日経に、大手企業が中小企業の特許やノウハウなどの知的財産権を奪われるケースが深刻になっているという記事がありました。

中小の知財を大手が奪う 巧妙な手口、公取委が調査 :日本経済新聞

  • 技術革新の担い手として中小企業が見直されている
  • 電子部品を覆うフィルムシートの事例。特許技術であり、内製化をしない旨の誓約書もとったが、いずれ内製化する予定ということが、メールの誤送信で発覚
  • 中小企業に発注をにおわせて、情報や技術を奪うのが知財取扱いの典型(日本商工会議所の担当者)
  • 特許権侵害については、被告の工場に専門家が立ち入り、証拠収集しやすくする新制度導入
  • 公正取引委員会も優越的地位の利用について、3万社にアンケート。2019年前半に調査結果を公表
  • 量販店が、プライぺートブランドの総菜レシピを委託先から提供させるなども対象
  • 大企業の共同研究の契約書は、研究成果は全部先方の知財になると書かれているものがある
  • 取引先にも、安易に知財を渡さない
  • オープンイノベーションには、公正な知財取引が必要

コメント

大手だけでは開発しきれない技術を、オープンイノベーションで中小企業にも一緒に考えてもらうという流れと、現実の購買部門を中心とした取引慣行とのギャップのような話でです。おそらく、多くの会社の知財部ほ、オープンイノベーション側だと信じたいと思います。

 

中小企業も、目先の仕事が欲しいので、多少の情報は渡してしまうかもしれません。

そもそも、特許になっているものは、公開されています。しかし、特許があっても、製造ノウハウがないと実施できなかったりしますので、ノウハウの簒奪などはありそうです。

 

以前の仕事で、商標条項が入っていると、契約書のチェックが回ってくることがありました。

そのとき、イスラエルの中小企業だったと思いますが、非常にレベルの高い契約書が送られてきて、驚いたことがあります。Blu-Rayなどの規格マークの契約書と遜色ないレベルでした。

 

社内にこの契約書をかける知財人材がいるということは、相当のレベルの会社であり、将来のGoogleになるのではないか?と、契約書を見ただけですが、そう思ってしまいました。

これだけの契約書を送ってくる会社に下手な対応はできません。

 

特許法改正や、公正取引委員会ガイドラインも良いですが、中小企業は武装すべきです。内部にそのような人材を抱えることも方法ですし、それができる法律事務所や特許事務所に依頼するのも、方法です。

 

中小にも、知財の核になる人材は必要ですが、契約書の作成など、内部でするとすると、ある程度の人件費の予算を計上しないといけません。あるいは、専門家と思って、弁護士や弁理士を雇っても、そのレベルに達しない人を雇ってします危険性も高いようです。

法律事務所・特許事務所に、外注する方が、確実で、安いかもしれません。

 

一般に、大手の法律事務所は、高いので、特許事務所も有効してはどうかと思います。特に、法律に詳しそうな弁理士のいる特許事務所です。

契約を英語で作成するなら、特許事務所の取引している海外の法律事務所は、渉外法律事務所の取引先と全く遜色ありませんので、日本の手数料が安い分、安く仕上がるのではないと思います。

 

共同開発契約で、開発資金を全部もってもらうようなタイプのものは、権利が大手企業になることが多いと思います。

資金は大手中心で、開発が中小中心なら、イーブンということで、共有でしょうか。ここは、交渉です。

共有の扱いも、法律通りで良いか、特約をした方が良いか検討が必要です。