Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

オプジーボの新発明者

米地裁で2名追

2019年5月31日の日経に、米地裁で、オプジーボの発明者に、ダナ・フーバーがん研究所の研究員ら2名を追加する判決が出たという記事がありました。

「オプジーボ」特許、米地裁が「新発明者」 :日本経済新聞

 

本庶教授と小野薬品が対立している間に、アメリカでは、別の研究者が発明者になり、この発明者も米国では特許をライセンスすることが可能で、現在の米ブリストルマイヤーズスクイブ(BMS)以外に、ライセンスができるそうです。

 

米国の特許法では、特許が共有の場合に、その特許を第三者にライセンスするとき、共有者の同意は不要で、今回の別の研究者が自由にライセンスができるそうです。

そうなると、この今回の研究者もライセンスを受け取ることを主張したり、別のライバル企業にライセンスをしたりして、小野薬品に入るロイヤルティも減り、本庶教授に入るお金も減ります。

 

本庶教順は、控訴する方向のようです。

 

●本庶教授と、小野薬品の係争は、日経の2019年5月23日の記事にありました。

小野薬品「契約は妥当」 本庶氏との契約見直し否定 :日本経済新聞

 

  • 小野薬品は料率見直しには否定的
  • 京都大学への寄付の意向はあり、172億円を引き当てている
  • 本庶教授は、1000億円の支援基金を主張

小野薬品からの事前の説明が十分ではなく、契約書にサインをしたということで、特許料率の見直しを求めているとあります。

裁判にはまだなっていないようです。

 

●日経の同じ、5月31日には、東大TLOの本田圭子さん、知的財産戦略ネットワーク社長の秋元浩さん、政策研究大学院大学の隅蔵康一さんの発言記事があります。

大学発医薬特許 どう生かす(複眼) 秋元浩氏/本田圭子氏/隅蔵康一氏 :日本経済新聞

 

特に、隅蔵さんの話では、日本の共有についての特許法73条に、そもそも問題があるのではないかという点が、面白いと思いました。ライセンスに同意が必要なので、他にライセンスできず、企業有利になりやすいとあります。

 

コメント

非常に成功している薬ですので、皆の関心が集まります。

 

米国では、出来上がっている特許の発明者に、今から発明者を追加できるという点も面白いですし、その特許を自由にライセンスできるという点も面白いところです。

 

今から追加できるというのは、発明者が権利者になるという考え方が徹底しているからなのだと思いますが、日本では無効にするぐらいしか思いつきません。

自由にライセンスできるという点も併せて考えると、他人の特許に後から自分が発明者になるという手法は、米国で、特許侵害追及を受けたときの、カウンターにもなりうるなという気がします。

 

また、日本の特許法73条の共有に問題があるようです。

共有というものをどう考えるかですが、日本の考え方は、当事者で徹底的に話あって決めなさいと読めます。

日本の共有のルールですが、有体物や不動産の共有のルールを借用して考えたのかもしれません。

物件のように、一つのものしかないと考えると、話合いをしてライセンス先を決めろとなりますが、無体財産という性質からすると、アメリカの方が素直で、それが嫌なら、共有者間の契約で特約を作り、共有特許のライセンスは同意が必要などとする方が分かりやすいように思います。

発明の実施促進という目的から考えると、アメリカに分がありそうです。

 

大学教授の発明は、所属する大学に特許発明を実施する機能がないので、教授の職務なのかもしれませんが、大学の業務でもなく(大学の考え方次第ですが)、職務発明にもなりません。

しかし、この点、今は、大学を特許権者にして、責任をもって特許取得をしたり、ラインセンスもする大学が増えているようです。

 

本庶教授の研究も、今なら、そのようなルートに乗ったのかしれません。ただ、大学教授側に、自分や自分の所属組織、顧問弁護士・弁理士などを使って、自身の権利を守る意思が必要なように思います。

権利は闘争して勝ち取るものです。

以前の会社の諸先輩を含めて、多くの企業知財出身者が、大学の知財部門に行っていますが、大学教授の考え方を、変える活動ができていれば、価値があるように思います。