Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

契約書のAIでのチェック

リーガルテックの一つとして

2019年6月4日の日経に、リーガルテックの一つとして、契約書のAIによるチェックの紹介がありました。

「リーガルテック」 契約書をAI点検 紙中心の日本 導入に遅れ :日本経済新聞

  • リーガルフォースは、4月に契約書のAI点検サービスを始めた
  • 契約書案をAIに読み込ませると抜け漏れの指摘、追加すべき文例が表示される
  • AIは、読み込んだ自社や他社の契約書データと、契約書案とを比較
  • イスラエルの「ローギークス」の実験では、弁護士は92分で85%。AIは26秒で94%
  • 米国企業の3分の1が契約書のAI点検を利用
  • サントリーホールディングスは、リーガルフォースのサービスを導入
  • 1200件/年の6~7割の定型契約に利用
  • 英語圏はリーガルテック企業が多い(約1000社)、日本は少ない(数十社)
  • 理由は、法務市場が小さい、紙が電子化できていない、米国の上場企業の重要契約書は開示の対象
  • 米国のAI契約点検企業のシールソフトは、契約書署名・管理のドキュサインと提携
  • ドキュサインの契約書データの活用
  • リーガルテックの活用の有無は、企業の競争力にも影響

というような内容です。

 

コメント

企業が小さなうちは、契約書は、一つのところにありますが、大きくなるにしたがって、各部署の契約を集めて管理することができなくなり、各部署ごとに契約書を管理すようになります。

秘密保持契約などの定型契約では、企業全体でどのような契約があるのかさえ、分からないというのが現状ではないでしょうか?

 

知財契約は、まだ、知財権の名義が一元化されていたりして、知財部がちゃんとデータを持っていることが多いと思いますが、業務委託や購買契約は、バラバラに存在するように思います。

 

一旦、バラバラになってしまったものを、一元管理するだけでも大仕事なのです。

法務への相談ルートを、イントラで集約するなどして、その結果物たる契約書案のワードや、署名済みの契約書をPDF化して、イントラ上に登録させるなどして、なんとか、集めるというのが現状であるように思います。

権限委譲と情報集中のバランスです。

 

このAIによる、契約書案のチェックは、その先の話ですが、サントリーが導入しているということは、実務的に使えるということなんだともいます。

ニュース:契約書自動レビューソフトウェア「LegalForce」正式版をリリースしました | 株式会社LegalForce

基本料金10万円/月、追加ユーザー2万円/月とあります。

 

次の機能があるとします。

 

 レビュー品質を守りながら、契約法務をサポート

 

各メンバーの状況を可視化し、業務管理を効率化

部門全体でレビュー方針と粒度を統一

一人ひとりの経験をチームで共有

最前線の弁護士の法務知見を、網羅的かつ常に最新のナレッジベースとして提供

 

法務内での、若手育成・研修ツールとしても使えるのかもしれません。

 

特許明細書の場合、方式的なチェックを支援するソフトは、いろいろあるようです。ただ、内容面のチェックではなさそうです。

 

商標の場合、ブランディが日本発の商用データベースであったように、そもそも、システムとの親和性は高いのですが、PatData的な管理ツールは色々ありますが、業務の支援に仕えるようなものは、ありません。

 

商標でいうと、各企業における商品の管理(ハウスマークは同じでも、商品はどんどん変わります)が残っています。

(更にいうと、インボイスの管理、最先使用日、使用状況といったあたりが、広告の管理などが、まったく手つかずです。)

 

ある商品を指定して、商標を特定すると、登録国の一覧が出てくるというタイプのソフトをイメージしているのですが、商品には、クラスヘディングや、上位概念、中概念、下位概念などがあり、良く分からないようになっています。

商標の棚卸ともいえる重要なところが、できておらず、この支援ソフトもありません。

ここは、大きな課題です。