2019年6月20日の日経電子版で、アディダスの3本線の商標について、EU裁判所が、商標を無効としたEUIPOの判断を支持する判決をしたことが載っていました。
アディダス「3本線」の商標権制限 EU裁判所が判断 (写真=ロイター) :日本経済新聞
- アディダスが靴や衣料品に使用している「3本線」
- アディダスは、3本線の向きなど使い方を限定しない、広範な商標保護を目指した
- 欧州連合(EU)の高裁にあたる一般裁判所(ルクセンブルク)は、アディダスの「どんな向きにも付けられる同じ幅の3本の平行な線」がEU全域において、同社の製品だと見分けられるだけの独自性を証明できていないと結論
- 2014年にEU知的財産庁(EUIPO)がアディダスの「どんな向きにも付けられる同じ幅の3本の平行な線」を商標登録
- しかし、16年にベルギーの会社が異議を申し立て。EUIPOは商標権を取消
- アディダスはこれを不服として訴えていた
- 上級の欧州司法裁判所(ECJ)で争う可能性はまだ残っている
コメント
久しぶりに、海外ネタです。
アディダスは、EUTMで、商品「衣服、靴、帽子」について、3本線を権利化しようとしていたようです。商標は、縦方向に3本の太いラインが並んでいるものです。
商標の説明に、商標は、製品のどちらの方向にも向けられた、等しい幅の3つの平行な等距離ストライプで構成されているとあります。
http://euipo.europa.eu/eSearch/#details/trademarks/012442166
アディダスは、すでに、部分意匠的に、商品を破線でかき、3本線を実線で書いた商標登録は、他にもあるようです。
今回の商標は、完全に、「3本線、等間隔、ある程度太い」ものは、「方向性に関係なし」に商標権をとろうというものです。
アディダスは、斜めになった3本線だけではなく、3本線を縦に書いたものや、ジャンパーの肩から腕にかけて3本線をあしらったものなど、商標としてだけではなく、デザイン要素、シンボルの図形として、3本線を活用しています。
そもそも、不競法で十分そうなものであり、商標権付与まではできないかなぁという権利です。衣服や帽子で、三本線など、いくらでもあります。太さや等間隔というのはありますが、デザイン的な使用と商標的な使用が交錯するところであり、あまりに広い権利という気がします。
ロイターの記事によると、アディダスのただの3本線の無効の請求をしたのは、ベルギーの Shoe Branding Europeであり、2008年に、1892年に設立され、欧州でもっとも古いスポーツブランドのPatrick(シューズメーカー)を買収しているようです。
そして、このPatricのブランドは、2本線(方向はアディダスと逆)であり、アディダスの商標に似ているとして、Shoe Brandingの商標が2018年に無効になっていたようです。
大学生のころ、履いていた靴が、白いPatrickでした。こんなところで、出てきたのかと思いました。
さて、アディダスは、EUの5カ国の使用は提出していましたが、EUすべてではなかったようです。記事は、アディダスには、まだ、他国についても、証拠を提出することで、3本線をEUTMで権利化する可能性があるような書きぶりです。
商品は、たった3商品ですが、本当に、方向もないような商標の登録を認めてよいかは、独占適応性があるのか、議論がありそうです。