Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

改正不正競争防止法(限定提供データ)

7月から施行

2019年7月8日の日経で、2019年7月1日から、不正競争防止法の「限定提供データ」制度が施行されているという話が載っています。

企業の蓄積データ どう保護する? (写真=AP) :日本経済新聞

  • 「限定提供データ」制度の新設
  • パスワードで管理された営業・技術データが保護対象。価値が高いものの、営業機密や著作物には当たらず、民法不法行為の主張しかできなかった
  • 改正不正競争防止法で、差止が可能に。しかし、刑事罰はない
  • 「限定提供データ」とは:他者との「共有」を前提に一定の条件のもとで利用できるデータを指す
  • 例1:自動車メーカーが、特定に相手に提供する走行データ
  • 例2:携帯電話の位置情報を加工したデータ(いつ、どこに、どのくらいの人数が集まるかのデータ)
  • 要件1:限定提供性・・・業として、一定の条件下で、特定の相手に提供
  • 要件2:相当蓄積性・・・相当な量。労力、時間、費用が焦点。一般に電磁的方法で蓄積されていることで価値
  • 要件3:電磁的管理性・・・IDやパスワードで管理されていること
  • 契約の留意点:データ提供時に、使用目的を限定しておくこと。使用目的が不明確であると、後から不正使用だと主張できない可能性

コメント

話題のビックデータ等についての、データ保護の法律と考えると、この改正は大事です。

相当蓄積性は議論になりそうな感じもしますが、実際は、①ID・パスワードの管理をすることと、⓶特定の人にデータを提供するときに、どのような契約をするか、特に、データ利用目的をどう決めるかが、ポイントのように理解しました。

 

不正競争防止法がどんどん変わるので、正直、理解が追いついていません。新聞記事を見て、経産省のWebサイトで、パンフレットやテキストを見たのですが、新聞の方が、読みやすいかなと思いました。

 

経産省のパンフレットは、パワーポイントの説明で、視覚的に理解しやすくなったものですが、テキストも、パワーポイントで作成されています。

法律のテキストというと、縦書きの文章中心の物を想像していたのですが、だいぶ違います。

(パンフレット)

https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/H30nen_fukyohochirashirev.pdf

(テキスト)

https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/H30_kaiseigaiyoutext.pdf

 

テキストの中で、現在の不正競争防止法の体系のぺージと、限定提供データの具体例のページが目に留まりました。

 

不正競争防止法の体系では、不正競争の定義(2条)で、今回の、限定提供データの不正取得が不正競争行為に入ったことが分かります(11号~16号)。

不正競争の類型は、22号まであるようです。ドメイン名の不正取得(19号)、代理人等の商標の不正取得(22号)が、商標やブランド担当としては、気になるところです。

 

不正競争防止法は、民法不法行為の延長です。

不法行為ではなかなか認められない、差止を認めるためのものと理解していましたが、条約上の義務として作られた条文で、刑事だけの条文もあるようです。

16条(外国国旗紋章等の不正使用)、17条(国際機関の標章の不正使用)、18条(外国公務員等へ贈賄)は、刑事罰のみです。

 

ちなみに、今回の限定提供データは、差止は可能ですが、刑事はないようです。知財権の侵害があっても刑事事件になるのは、極一部ですが、多くの権利で処罰の対象となっています。少し刑事罰に頼りすぎであるような感じがしますので、今回、外したのは良いのではないかと思いました。

 

また、限定提供データの具体例としては、機械稼働データ、消費動向データ、裁判の判例データベースなどが、例示されています。