Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

アップルが知財侵害

公取委の調査

2019年8月7日の朝日新聞に、昨秋の、公正取引委員会のアンケートに対して、アップルと部品供給契約を結ぶ複数の企業が、知的財産権を侵害する可能性のある契約を一方的に結ばされたと回答しているという記事がありました。

独禁法の禁じる、優越的地位の乱用にあたる可能性があるとして、公取委が時事確認や追加の調査をするか検討中とあります。

  • 公取委が昨秋、国内の中小企業を中心とした3万社にアンケート
  • 大企業が中小企業の知的財産権を不当に吸い上げる事例がないか調査
  • スマホの電子部品の製造会社など10社がアップルの名前を挙げた
  • アップルの秘密は厳格に守るよう求める
  • 一方で、日本企業の開示技術は無償で他のビジネスに利用できるという契約を結ばせる例
  • 公取委に訴えた部品供給元には、大企業も含まれる

とあります。

 

コメント

この記事ですが、日経にはありません。この種の記事は、日経にも朝日新聞にも、同時に載ることが多いのですが、珍しいなと思います。(毎日新聞には出ていますが、有料記事なので、詳しいところまでは見ていません。)

 

話自体は、ありそうだな話という気はします。

自社事業の将来の拡大が見込まれる場合で、自社の開発した技術や特許だけでは不足なことは良くあります。

 

その場合、特許を有している会社で、すでに、その事業に関心を失っている会社から、特許を買い取るという選択肢が一つあります。

 

もう一つの選択肢が、取引先の特許を吸い取るこの種の方法です。この種の条項は、商売上、アップルと取引をせざるを得ない場合に要求されると、呑まざるを得なくなります。

 

今回のアップルのような会社が、継続的に仕事をくれるなら、まだ良いですが、技術だけ吸い上げて、次回からは別の会社にとなりそうです。

 

朝日新聞にも、アップルを通じて技術が流出すると、価格競争に陥ったり、別の企業に供給元を変更されたりという不利益が発生しかねないとあります。

 

そうなりそうと分かっているのに、契約せざるを得ないところが苦しいところです。

目先の仕事が欲しいばかりに、大局を見誤るということは良くあることです。

 

この場合、社内の営業部門と知財部門は、真っ二つに割れそうです。

 

営業としては、目先の仕事が欲しいので、この条項を丸呑みして、GOを出すかもしれません。

しかし、数年たって、事業が他社にもっていかれると、今度は、営業は知財に助けてくれと言ってきます。

ライバル企業を、自社の特許でなんとか止めて欲しいという依頼です。

今回のアップルのような契約をしていると、契約上はこの特許では無理なので、別の特許権侵害がないか探すことが必要になります。

 

正面からの特許ライセンス契約は、知財部が中心になりますが、販売契約の一条項程度なら、営業が契約にサインできる会社も多いのではないかと思います。

このあたり、全ての契約が知財にあがり、事前にOK、NGの判断に知財も関与できないと、大変なことになりそうです。

少なくとも、企業においては、経営者が、全てを理解した上で総合判断してもらっておかないと、将来に禍根を残しそうです。