ファッションロー
2019年8月16日のセミナーの午後の部は、青木先生のファッションローでした。最近、ファッションローという言葉を聞くようになりましたが、何を指すのかと思っていました。
ファッション企業やファッションデザイナーが通常直面する法的問題に対処する法的専門分野ということです。
ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)が有名らしく、日本でも文化ファッション大学院大学(文化服装学院系)や、国際ファッション専門職大学(東京モード学園系)などで、講義があるようです。
主に扱う分野は、知財(商標や著作権、意匠権、特許権、営業秘密、訴訟戦略、ライセンス、模倣品)の他に、売買、雇用(重要とのことです)、海外のファッションローですが、どうやらマーケティングや経営学的なところまでも含む相当広い概念のようです。
ファッションの世界では、著名ブランドとフォロワーと二種類あるようです。著名ブランドは知財を用いて攻める方で、フォロアーは何とか攻撃から逃げようと防戦する方です。
著名ブランドは、アグレッシブに権利行使をすることが多いとのことです。
ファッションは、特に欧州では主要な産業であり、欧州勢には、とことん戦う姿勢の会社が多い感じです。
特徴としては、特許は少なく、商標、不正競争防止法(デッドコピーと、商品等表示、著名表示)、著作権法を活用するケースが多いようであり、各社が、自社に合ったその組み合わせをするのが特徴のようです。
ファッションにも、短ライフサイクルものもあれば、超ライフサイクルものもあり、各知的財産権の保護期間の長短を理解して、使う法律を選択するのが、ファッションの世界では必要なようです。
商標については、立体商標や、色彩商標、位置商標、日本では認められていませんが、佳織や味や触覚の商標なども、積極的に権利化している会社が多いようです。また、防護標章登録を取得しているのも、特徴とありました。
その他、保護する法律毎に特徴の説明があったり、多くの事例の紹介があったり、TIPSの紹介が多い講演でした。
事例一つひとつが、わかりやすくて、面白いのが、ファッションの世界です。
例えば、TIPSの一例としては、
- 個人の氏名をブランドとするケースが多いが、それを会社で権利化するために譲渡してしまうと会社が売られると大変
- バックなど、部品としての金具が、案外もめる
- アンケートの話で、NERAというコンサルファームの金子さんという方にお願いすると良い
- OAPIは、マドプロで登録は取れるが、権利行使はできない
感想としては、お話しされている個々の事例は、聞いたことがあったり、無かったりなのですが、商標や意匠の世界にいれば、知ることのできる情報のような気がします。
青木先生は、それを、大量にインプットされておられ、多くの引き出しがあり、それをまた、大量にアウトプットされるので、他の弁理士の話とは違うんだろうなという気がします。
ファッション系の話題は、商標でも著作権でも多いのですが、これを商標などの法律の視点から見るのか、反対にファッション事業者の視点から見るのか、視点を変える点に、ファッションローの面白さがあるのかなと思いました。
おそらく日本でも、ファッションは徐々に重要産業になっていくのだと思います。そのとき、多くのファッションの世界で、法務や知財を担当される方、マーケティングや経営にタッチされる方にとって、ファッションに係わる法律を知っておく=ファッションローは重要なのだ思います。
(下記の本を参考図書にされていました)
Fashion Law: A Guide for Designers, Fashion Executives, and Attorneys
- 作者: Guillermo C. Jimenez,Barbara Kolsun
- 出版社/メーカー: Fairchild Books
- 発売日: 2014/03/13
- メディア: ペーパーバック
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(下記のThe Fashion LawのWebサイトは、たまに検索でヒットします。法律関係のWebサイトとは思えないですね。ファッション雑誌のようです)