Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

プラットフォーマーの法的責任強化

EUディレクティブ

2019年8月19日の日経で、EU著作権指令が6月に発行して、YouTubefacebookのようなプラットフォーマーへの規制が強化されるという記事がありました。

著作権保護 EUの大転換 プラットフォーマーに法的責任 「事実上の検閲」批判も :日本経済新聞

  • 背景に、Spotifyなどに比べて、YouTunbeが支払っている使用料は、20分の1。権利者らに不満
  • EUは、ユーザーが投降するコンテンツへの規制強化
  • 著作権侵害コンテンツを見られるようにする行為自体を著作権侵害と見なし、サイト運営事業者にも法的責任
  • 本来、侵害の主体はユーザーで、事業者は場所を貸しているだけで、違法かどうかの判断は難しい
  • 権利者などから違法と指摘された時、削除をすれば事業者は免責されるのが原則だった
  • 日本のプロバイダー制限責任法、アメリカのデジタルミレニアム著作権法も同様なルール
  • 今回、EUは、事業者の大手には、次の最善の努力を求める
  • ①権利者から許諾を得る、②削除したものが再アップロードされないようにする、③権利者から十分な情報提供を受けた場合には、通知の有無にかかわらず削除したり、アップロードを防いだりする
  • ②や③の再アップロードをさせないようにする仕組みは、実質的にフィルタリングや検閲との批判
  • また、今回、クリエーターが事業者から情報を得たり、契約変更や取消ができる権利を認めて、クリエーターの保護をした点も特徴
  • 日本への影響は未知数

というような内容です。

コメント

情報がてんこ盛りの記事ですが、これだけの情報を良く整理されたなと思いました。

 

日本には、YouTubefacebookレベルのプラットフォーマーはいませんので、それほど問題になっていないのかもしれませんが、考え方の転換であることは確かです。

 

記事の冒頭に、EUは個人データ保護に続きネット上での著作権侵害についても大きく転換しようとしているとありますが、そんな感じです。

 

論点は、プラットフォーマーが事実上の検閲をしないといけないことになる点だと思います。削除したものが再アップロードされないようにする、十分な情報提供を受けた場合には、通知の有無にかかわらず削除したり、アップロードを防いだりするというのは、ある種の検閲とも言えます。公的機関の検閲ではないですが、大手プラットフォーマーの影響力から、国家同視説的に考えると問題かなと思います。

もともとの目的が著作権侵害物の排除ということであり、目的は是認できるとしても、できるだけ、問題の生じないような仕組みが必要なように思いました。

 

もう一つ、クリエーターからプラットフォーマーへの情報を得られるようにする仕組みも、面白いなと思います。

プラットフォーマーに集中している、利益や情報を、クリエーターが得られれば、次の創作につながりそうな気はします。

このクリエーターは、ユーザーではなく、曲などを使われている方なのかまでは記事からは不明です。

 

記事にもありますが、音楽は著作権管理が進んでいて、写真はこれからとあります。ここも、課題ですね。

 

著作権法や個人データ保護の世界は、変化が急な世界であり、これに比べたら、商標や意匠の世界は、まだまだ、ゆっくりしている世界だなという気がします。

 

30年前に聞いた議論が、まだ、議論されていたりします。平和なのは、なんやかんや言っても、登録制度のおかげだとは思います。