Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

日本商標協会の年次大会(その2)

2日目の講演会(午前の部)

2019年9月6日は、年次大会の二日目です。

朝から夕方まで、6名のスピーカーの話を聞くので、少し大変かなと思ったのですが、どの講演者の話も面白いので、まったく問題ありませんでした。

 

午前の部は、佐藤商標課長の話と、資生堂ブランド法務室の柳澤さんのお話です。

 

1. 商標政策の現状と今後の課題(特許庁 佐藤商標課長)

商標出願は、2018年は減少しましたが、基本的には増加傾向にあるようです。増加の理由は、2018年は低調だった、特定出願人(例のあの人)の出願が活発化していることが理由だそうです。

どちらにせよ、長期的にみて、商標出願は増加傾向で、審査官が不足しているので、外注や任期付き審査官の採用で乗り切ろうということでした。

特に、任期付き審査官は、商標では初めてで、特許の任期付き審査官と同様に、延長も認められ、弁理士の資格も取得可能であり、是非、応募してほしいという話でした。

詳細は、特許庁のWebサイトに載るようです。

 

商標制度面では、店舗外観、内装について、審査基準を改正して対応するようです。立体商標は少し古い制度ですので、破線を可能にして、詳細な説明ができるようにすることと、周知性の認定基準を全国周知するなど審査基準の改正をするだけで、対応できそうな感じでした。


あと、「事例から学ぶ商標活用ガイド」を見てほしいという話がありました。特許、意匠には昔からあったようですが、商標でできたので、見てほしいそうです。弁理士も、調査や出願、更新中心の商業業務から、多少のコンサル業務にシフトするとき、このような視点が重要になるのではないかと思います。

 

2. 行列のできる企業法務を目指して(資生堂 ブランド法務室)

こちらの話が、一番時間も長く、今回のメインの講演だったのだと思います。

最近、花王も、そうですが、商標部門が、景表法を業務に取り入れるケースが増えています。社内の相手方が、営業・マーケティング担当者であり、一番困るのは、商標と景表法ですので、相談が一か所でできるとワンストップサービスになります。

 

チームの役割は、景表法、CIロゴ管理、ドメインマネジメント、模倣品対策と言っていましたので、商標の権利取得、維持管理を除くものをまとめた感じです。

 

元々、研究者・技術者のようですが、マーケティングも経験して、景表法などの世界に入って1年半といっていました。

1年半で、実績を積んで、商標協会のスピーチができるなんて、なんて仕事が早いんだというのが、第一印象です。

 

景表法を自分で分析して、自分なりに整理しなおしている点は、技術者だなと思いました。

 

タイトルの、行列ができる企業法務というのは、クライアントが喜んで相談に来てくれる法務部という意味のようです。


商標の仕事でもそうですが、事業部門が責任を取れば良いんでしょう、という人がいるとのことです。これには、毅然とダメなものはダメと折れない姿勢と、一緒に対案を考える、アイディアを出すというのをやっている姿勢は素晴らしいと思いました。

 

あと、社内メルマガを出して、TOPを含めて、全社員に景表法の他社の事例などを共有しているのも凄いなと思いました。

 

プレゼンもうまいですし、国内外の宣伝の話題も沢山紹介してもらいました。景表法担当として、特に、そこまでいらないように思いますが、これレベルで、宣伝を語れると、宣伝担当者も一目置くのではないか思います。

よくやるなぁという感じです。

ちなみに、資生堂も社内公用語は英語とのことです。