Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

東急の社名変更

「電鉄」を外す

2019年9月3日の日経に、東京急行電鉄が、9月2日に社名から「電鉄」を外し、「東急」に変更したという記事がありました。

「電鉄」外す東急の成算 社名変更、不動産を中核に :日本経済新聞

 

  • 母体になった、田園都市株式会社の設立から101周年の2日に合わせて社名を変更
  • 10月1日付で、鉄道事業は、100%の新設子会社の「東急電鉄」に移す
  • 本体は、不動産事業と持株会社の機能
  • 渋谷再開発の不動産事業から、周辺の五反田・目黒・大井町、新宿に拡大
  • 東急グループ内には、不動産事業の有力企業「東急不動産」がある
  • 東急の出資比率は、16%
  • 東急不動産との連携が課題
  • 不動産事業の利益では、東急不動産の利益は、旧電鉄の不動産事業の2.5倍
  • すぐに両社が統合に向かう環境にはない
  • 東急不動産との連携を含めたグループ力を高める戦略が課題

というような内容です。

 

コメント

このニュースを見て思ったのは、

  • 東急が「電鉄」を外して不動産中心に。鉄道は子会社化
  • 東急不動産への出資は16%しかない
  • 101周年を目途に

の3点について関心を持ちました。

 

まず、「東急」の場合、「東急電鉄」、「東京急行電鉄」と呼ぶよりも、そもそも「東急」で通っていたので、特に、驚くほどのことはないように思います。

 

ただ、「電鉄」という言葉があると、公益事業であり、信頼があり、事業に有利というイメージがあります。すなわち、鉄道が中核で、不動産や百貨店やホテルなどは、サブというイメージがあったので、「電鉄」の言葉を抜くというのは、時代が変わったことの象徴でもあると思いました。

今回は、子会社の「東急電鉄」ができるようですので、「東急電鉄」が完全になくなるわけではありません。

 

ちなみに、全国の鉄道会社の社名一覧を見ていると、「●●鉄道」「●●電鉄」が多いのですが、中に「●●急行」「●●観光」もあり、必ずしも「鉄道」「電鉄」を入れないといけないわけではなさそうです。

日本の鉄道事業者一覧 - Wikipedia

 

次に、東急不動産への出資比率が、16%しかないという点ですが、これは低いなという感じがしました。

日本中心に事業では、もともと同じ会社で、経営者や、理念も共通にしていたりして、問題はないということもありえます。しかし、海外事業ではパートナーとの関係などがあり、このような低い出資比率は避けた方が良いことも多いので、基本は50%超というのは、同じブランドネームを使うときの原則だと思います。

16%では、コントロールできないなという感じです。

 

10年ほど前に、東急のブランドマネジメントの話を講演会で聞いたことがあり、通常は「ブランドマネジメントする(経営する)」というところを、「ブランドマネジメントメント(経営する)」と言っておられたのですが、東急グループにとっては、東急という商標は、グループの鍵になっていという話でした。

 

J Plat Patを見ましたが、「東急不動産」という商標権を、東急不動産が権利取得することは、基本的に許されていないようです。

 

最後は、101周年の周年事業という点です。中途半端です。100周年は分かりやすいのですが、101周年には意味があるとは思えません。東急なら、109周年なら意味があります。もしかすると、109周年に向けて、東急と東急不動産の統合があるのかなと勘ぐりました。

 

ちなみに、驚くべきことですが、渋谷の「109」ビルに出入りしている、若い人が、これは「マルキュウ」と呼ぶのは良いとして、「とうきゅう」「TOKYU」「東急」「109」が同じ経営母体ということを理解してないことがあるようです。

漢字、ローマ字、ひらがな、カタカナ、数字を、自由に使うのは、良いのですが、ブランドマネジメントからすると、ちょっとイメージを拡散しすぎているかなという気はします。