Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

腕時計の原産国表示

朝日新聞の記事

2019年9月2日の朝日新聞に、腕時計の裏蓋にある「Made in Japan」の表示についての記事がありました。

1面の左側(全体の3分の1ぐらい)と2面を使った、扱いの大きい記事で、スクープ的に扱っています。元開発者の告発があったようです。

 

内容を要約すると

  • ムーブメントは日本製。腕時計の組み立ては中国
  • 中国を出るときは、腕時計の裏蓋には、中国の税関対策に、「Assembled in China」のシール
  • 日本で「Made in Japan」と刻印
  • ブランドは「ブロニカ
  • 日本の時計売り場や通販サイトで販売
  • 景品表示法では、製品の内容に実質的な変更をもたらす行為(実質的変更行為)が行われた国が「原産国」
  • この基準は、1973年の基準。当時は、日本の人件費が安かった
  • 日本時計協会は、制度変更を掛け合ったが変わらず。協会独自のガイドラインでムーブメントだけではなく、腕時計全体の組み立てをした国を原産国表示の基準とした。
  • しかし、非加盟の会社は、守る必要はない
  • スイスは、ムーブメントがスイス製である他、すべての組み立てや最終工程がスイス国内で行われ、自国製部品の割合など厳格な規定
  • 告発を受けた会社の社長は、裏蓋刻印とチェックの最終工程をすれば、ギリギリセーフではないかとの意見
  • 日本には製造工場が少なく、安く作れない

コメント

原産国表示の問題が、新聞の1面に出ている非常に珍しい記事です。ニュース性があると判断したようです。

朝日新聞は、内部告発を受け、販売を確認して、中国の工場に取材に行ったり、時計を分解してみたり、発売元の大阪の会社社長にインタビューまで行っています。

 

景表法違反かどうかは、はっきり記載がないのですが、取り締まるにはルールの改正が必要と業界団体が考えていることからして、現状は違反ではないと考えているのだろうと思います。

そうなると、これを放置している消費者庁の問題になりそうです。

 

製品の内容に実質的な変更をもたらす行為(実質的変更行為)が行われた国が「原産国」ということは、下記に記載がありました。

商品の原産国に関する不当な表示 | 消費者庁

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/pdf/100121premiums_14.pdf

 

腕時計の場合、機構的なムーブメントよりも、文字盤、ガラス、時計の側、ベルトなどのデザインの方に価値があるので、消費者の認識は、これらの組み立てたが行われた国が製造国というのが、素直なところではないかと思います。

しかし、記事からはハッキリはしません。

 

時計業界が働きかけたのに、通達が変わらなかったというのは、この通達の言っていること自体は問題ないこともあり、変更が簡単にはできなかったのだと思います。

ただ、この通達は、抽象的すぎるような気もします。

 

この記事はここで終わるのか、景表法の通達の改定まで行くのか、どうなるのかは分かりませんが、通達はそのままでも、腕時計については、このように考えるという実施細目ぐらいは必要になるように思います。

 

ちなみに、「ブロニカ」を検索すると、この時計の他に、昔、日本にあったカメラのブランドという検索結果もありました。

商品区分なども違い、商標法的には問題ないのでしょうが、ちょっと気になりました。