2019年9月10日に発行された、中央経済社の「ブランド・マネージャー資格試験公式テキスト」を購入してみました。著者は、一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会で、監修は中央大学の田中洋教授です。
田中先生が監修されているので、内容は良いんだろうなと思って購入しました。
帯に「マーケティングとブランディングの基本が1冊で学べる!」と書いてあったのですが、まさしくそのようです。
従来、マーケティングの本と、ブランディングの本は、別々にありましたが、このテキストは、一冊になっています。
資格試験用の公式テキストで、どの項目も簡潔に説明されているので、マーケティングとブランディングを一冊にまとめることが可能だったのかもしれません。
ブランドの仕事をしていると、マーケティング用語を良く聞きますが、マーケティングとブランディングの関係性など、明確に提示されたことはありませんでした。
この点、本書では、三角形の絵を使って、底辺に経営理念(ミッション・ビジョン)があり、その上に経営戦略、その上にマーケティング戦略、その上にコニュニケーション戦略と置き、全てが一貫していることが必要で、この全体をブランド戦略としています。
読んでみて、自分で付箋を付けた箇所は、
- ブランドの定義:消費者や顧客からみた識別(だいたい商標の定義と同じなのですが、判断主体を明確に書いてあるので、少し違うような気がしました。)
- ブランドの想起:ブランド再認とブランド再生(これは、ややこしいですね)
- ブランドのメリット:消費者・顧客のメリットとして、探索コストの削減があがっている点(商標のサーチコスト理論と同じですね)
- ブランディングの定義:ブランドであり続けるための継続的活動*1
- セリング、マーケティング、ブランディングの違い:よくマーケティングとは「売れる仕組みを作ること」と云われるが、ブランディングとは「売れ続ける仕組みを作ること」と整理
- PEST分析、3C分析、SWOT分析(クロスSWOT分析)の説明
- ブランド体験の「推奨規定/禁止規定」:よくあるロゴの禁止規定ではなく
- ブランド・ステートメント:ブランド・スローガンや、ブランド・ブックとはちがうもの。より詳細なブランドの設計図のようなもの
というところです。
商標の場合、商標法があり、立法趣旨を説明した青本などがあるので、言葉のズレは少ないのに比べて、
マーケティングやブランディングの話は、学者によって、説明の仕方が違うので、関係者で話をしていても、微妙なズレが生じることがあります。
組織の多くの人が、ある一定の言葉の理解を共通にしていることは、意思疎通の齟齬が少なくなり、非常にメリットがあることだと思います。
各社独自に教育ツールを作る方法もあるでしょうが、一つの分野だけならともかく、マーケティング、ブランディング、商標といった、3つの分野を横断的に説明できる人は多くないと思います。
そういう意味では、この本に乗っかって、理解を共通にしてしまうのは、有効な手段ではないかと思いました。
本書は、デービッド・A・アーカー、ケビン・レーン・ケラー、ピーター・ドラッカー、フィリップ・コトラーを上手く、一冊の本にまとめているように思いますし、
産業人が知っておくべき知識として、良く整理されているように思います。
マーケティングの分析手法は、別の本で理解を補う必要があるかもしれませんが、相互の分析手法の関係性を説明してあり、有益だなと思いました。