違和感の正体
2019年10月10日の文春オンラインにある「大阪の人気たこ焼きチェーン『くくる』商標めぐり全国でトラブルが続発!」という記事を読みました。
新大阪駅にもお店がある、たこ焼きの「くくる」が、全国の「くくる」という名称の居酒屋などに、警告書を送っているようです。
大阪の人気たこ焼きチェーン「くくる」商標めぐり全国でトラブルが続発! | 文春オンライン
- 「くくる」を経営するのは、大阪府守口市の「白ハト食品工業㈱」
- 「くくる」は沖縄の言葉で、「こころ(心)」の意味
- 沖縄の居酒屋などで良く使われていることば
- 文春オンラインは、複数の内容証明郵便送付先を取材
- 専門家は、1992年に出来たサービスマーク登録を含めて、商標権は全国に及ぶ権利であり、小さな店も商標調査や権利取得をすべきとの意見
というような内容です。詳しくは、文春オンラインを見てください。警告書の実物もあります。
コメント
文春は、警告書をもらった居酒屋や喫茶店などに取材をしており、この記事を見ていると白ハト食品工業はちょっと悪者となっています。
バランスで、弁理士が法律的な説明をしているという構図でしょうか。
白ハト食品工業の工場に住んでいたことがあるので、この会社は身近な存在です。当時は、「くくる」よりも、さつまいもスイーツの「らぽっぽ」のお店を経営している会社として有名でした。
年に一度、近所の人に即売会のようなものをやっており、人気がありました。
さて、本件、商標とブランドマネジメントの双方の視点があります。
ブランド的には、文春の取材がそうだからかもしれませんが、弱いものいじめをする大企業という構図です。
ここは上手くコントロールしないと、たこ焼きの「くくる」のブランドの人気に傷をつけるリスクがあります。
自分が強者であることを認識した上で、社会的に許容される限度を超えた、過度な権利行使には慎重になるべきかもしれません。
自分で自分のブランドのレピュテーションを傷つける可能性がありますし、マスコミへの対応を誤ると、大変なことになります。
一方、商標法の問題は、何点かあります。
1.「くくる」という言葉の識別性
記事にある、沖縄の言葉で「くくる」は「こころ」を意味するという記載の延長ですが、沖縄料理の飲食店ではよく使われており、識別力がないなら、沖縄居酒屋には権利主張ができない可能性があります。
2.先使用権の発生
1997年の白ハト食品工業の出願前から使用しているなら、先使用権が認められる可能性があります。周知であることが必要ですが、地域を絞って主張することで対応できる可能性があります。
3.類似役務審査基準と実際の役務の類似の差
居酒屋とたこ焼き屋を、一緒に括って類似役務としている点は世間の認識とズレています。書類上の混同は生じているが、実際上の混同が生じていないケースです。
居酒屋でも、たこ焼きを出しているという反論もありえますが、お店の中に入った後の2次的な話であり、これは別の議論です。
今回は、ブランド論としても、商標の議論としても、権利主張をすることが、必ずしも白ハト食品工業に有利になるとは言えないと思うのですが、なぜ、あえて権利主張するのかなと思いました。
裁判にでもならないと、会社の意図が見えてこないかもしれませんが、意味が良くわかりません。
フランチャイズビジネスをするときに、加盟者から、対応をせがまれるという構図でしょうか。