大手と直接取引へ
2019年10月8日の朝日新聞の「けいざい+」の新潟の酒という連載で、イオンによる越乃寒梅の販売が記事になっていました。
- イオンは7月下旬から、越乃寒梅をつくる石本酒造と直接取引
- 400店舗で比較的安い商品を、21店舗で高級品を販売
- 石本酒造は、これまでは特約店契約を結んだ小売りのみで販売
- しかし、小売店は20年で半分に激減
- 大手スーパーでは、一部の特約店から仕入れた越乃寒梅を転売。価格は高く(2.6倍)、品質管理も行き届かない
- 「獺祭」の旭酒造は、約2年前に「お願いです。高く買わないでください」の広告
- この広告を機に、イオンは転売品の越乃寒梅の購入をストップし、石本酒造との契約へ
という内容です。
コメント
以前からイオンには越乃寒梅が置いてあるなと思っていたのですが、少し高いなとも思っていました。
卸に自由に販売させるのではなく、小売りを商品説明のできるような特約店だけに絞るビジネスモデルだったんですね。
しかし、一部の特約店が転売して、イオンに流していたとあります。
全国のイオンに流すだけのボリュームを、一部の特約店だけで対応しようとすると、相当なボリュームの取引になります。おそらく、石本酒造にも誰が流しているかは分かっていたのではないかと思いますが、大手の特約店でもあるので、目こぼしせざるを得なかったのかもしれません。
商品説明や品質管理のために、特約店とのみ契約するとあります。
有名な商品ですので、商品説明は不要かもしれません。広告やネットで分かりやすく説明すれば、十分かもしれません。
また、高級品は、品質管理のために、冷蔵庫保管などの条件があるかもしれません。
しかし、大手と契約すると、特売品にだされたり、値崩れを起こす可能性もあります。こうなると、折角の名前が通った商品である、越乃寒梅のブランド価値を維持できない可能性もあります。
一方、大手の流通に置くことで、消費者の身近に商品があることになり、売上の拡大があります。
売上拡大をとるか、ブランド力の維持を取るか、難しいところです。短期的には売上の拡大に意味があり、長期的にはブランド力の維持に意味がありますが、両者のバランスを上手にとるのが、難しいというところでしょうか?
ブランドは再販では確立できない。直販でのみ確立できる。ルイ・ヴィトンやシャネルのように。というような話を聞いたことがあります。
自動車では、車検制度もあって、メーカーの資本の入った販売会社や、系列店でしか、自動車を購入できません。
一方、家電製品では、系列小売店の時代から、量販店の時代になり、現在はネット販売の時代になっていますが、徐々にメーカーの力が落ちています。
越乃寒梅も、獺祭も、流通大手と取引をして規模を負いながら、ブランド力を維持しようとすると、いままで特約店が担ってきたような商品説明や品質管理を、流通大手にお願いせざるを得ません。
アップルは、例外的に、流通大手を使いながらブランド力を維持しています。あの手法が必要になりそうです。
ポイントは、販売担当者への研修や、大手流通の商品展示コーナーの作り方ですが、ここまで指導するアップルはさすがだと思います。