Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

読んでみました

「IPランドスケープ経営戦略」

 日本経済新聞社発行の「IPランドスケープ経営戦略」を読みました。日本経済編集委員の渋谷高弘さんと、IPL経営戦略研究会の共著です。IPL経営戦略研究会では、KIT虎ノ門大学院の杉光一成教授がまえがきなどを書かれています。

IPランドスケープ経営戦略

IPランドスケープ経営戦略

 

 

(第1部、渋谷さん担当)

  •  IPランドスケープとは:最広義では、知財を中核に据えた経営そのもの。最狭義では知財情報を中心とする分析手法
  • IPとは:知財権だけではなく、事業・営業上の有用な情報(個人情報・ビッグデータを含む)、契約、法律上の権利によって生じる非貨幣的資産、商業上活用できる無形資産、人材、ブランドなど広範な知的資産を含む意味(事業場必要なすべての無形の資産)
  • 従来のパテントマップやパテント・クリアランスではなく、知財の状況を分析・経営者に分かりやすく説明し、自社の強み・弱みを踏まえて、新たな戦略やビジネスモデルを提言していくもの
  • IPランドスケープの目的は、経営陣や事業責任者に、経営戦略や事業戦略立案のために提示するもの
  • 知財データを加味した、マーケティング・リサーチ
  • 会社の将来ビジョンの策定、M&Aや事業提携、新規ビジネス、事業構造転換、資金調達で活用
  • 経営デザインシート(大和合金の事例)
  • 内閣府知的財産戦略本部の経営デザインシートの作成で活用

知的財産戦略本部 (シートのダウンロードが可能:経営ビジョンの策定に有用)

  • 知財ビジネス評価書による資金調達(ホニック・正林国際特許商標事務所が協力)

(第2部の具体例で気になった点)

  • アップルは、アイコンやデザインを意匠と商標と特許を同時取得
  • アップルの商標登録では、デザイン単独の商標が多い
  • ダイソンは、電動歯ブラシに進出するだろう

(あとがき:渋谷さん担当)

コメント

昨日の続きのようなものです。渋谷さんのあとがきに、IPランドスケープは経営のオプションではなく、マストだとあります。昨日、手段の一つと書いたのですが、私の認識よりも、重要なものという位置づけなのかもしれません。

 

気になった点を、上にまとめました。M&AにIPランドスケープが有用だとは思っていましたが、将来ビジョン策定、事業構造の刷新に有効というのも、そうだと思いました。そうなると、経営企画に複数名、知財パーソンを送り込む必要が出てきます。

 

特許調査に、マーケティングリサーチを組み合わせると、ほぼほぼ、IPランドマークになりそうです。特許調査の人がマーケティングリサーチを活用するのと、マーケティングリサーチ側から、特許調査に入るのと、双方やらないと抜けが出そうです。

 

杉光教授は、東芝出身ということです。大手電機は、事業は上手くいかなかったが、人材は輩出しているということでしょうか。

 

正林さんは色々やっているなと思ったのと、アップルは、アイコンや電卓やメモパッドなど、商標と意匠をセットで出願しているのは、驚きました。

単に、自社の使用を確保するだけなら、意匠だけでも良さそうです。あるいは、これらの基本的なものは、15年程度では足りないので、商標権も出しているのかもしれません。特許も上手く絡めているようです。知財ミックスですね。私は特許の担当です、意匠の担当です、商標の担当ですというような、狭い話は企業視点では、ありえないなとあらためて思いました。(事務所視点では、依頼を受けて出願するのを、効率化するにはあり得るのですが、モダンタイムスの感はあります)

 

ダイソンは、EVなのかと思ったら、実は、電動歯ブラシや、洗髪・乾燥、ジェットポンプ当のその他のポンプ、加湿などに注力しているようです。製造実習をしていたいので、パナソニックの掃除機の出願が減っているのも気になります。

 

この本、読みやすいですし、面白いので、ご一読をお勧めます。