使用証拠
続きです。
EUTMには、使用証拠は、異議申立と不使用取消と無効の3点などで規定があるようです。もちろん、侵害にも関連しますが、そこは各国法によるのだと思います。
異議申立をしたときに、被異議申立人から使用証拠の提出を要求される点が、日本とは違うところでしょうか。よって、異議申立をするには、使用が前提となります。
商標には使用義務があり、Grace periodは5年であり、独占と長期の保護は商標の使用がないと正当化されないとします。
輸出のみでも使用になりますが、EU内での使用は必要ということです。
異議申立人が提出しないといけない5年以内の使用証拠は、2016年の改正前は、後願の商標の公告日前5年間の証拠だったのが、現在は、後願の商標の出願日(優先日)前5年に変わっているそうです。(理由の説明まではありませんでした。)
なお、不使用取消の場合は、取消の請求日前5年以内の証拠が必要です。
被異議申立人が使用証拠を請求できるのは、初回の答弁書を提出するときに限定されているようです。
使用証拠になるのは、写真、広告、カタログ、パッケージ、ラベル、インボイスと、一般的です。市場調査のアンケートが証拠になるのは、特徴的です。証拠が、主要5か国語以外のときは、翻訳が求められることがあるようです。
使用は、EUTMの場合はEU域内のどこかで良く、各国登録の場合は、その国一部でも良いとしていました。
出所を表示するための商標の使用でなければならず、販促の目的の商標の使用だけではだめということを言っています。キャッチコピーか、自他商品識別標識としての商標か、という点でしょうか。
Use as a trademarkと言っており、「商標的使用」と同じようなことを言っています。
無償の商品でも使用になることがあり(※最近はFreeの商品・サービスも多いためでしょうか)、一方、Give Awayは真正な使用とならないとします(※商品ではないためでしょうか)。
広告は一般的には使用証拠になるが、インターネット上の使用はWebページだけでは不足で、どこで、どうやってと説明が必要ということでした。
質問では、OEM製造して、輸出される場合、使用ありとなるかというもので、使用になるということでした。
また、設定登録がなく使用権者の使用でも使用になるということです。
コメント
実際に異議を受けたり、不使用取消請求を受けたときに、どのような使用証拠を提出するかは、現地代理人の指示に従ってやってみないとよく分かりません。
特許事務所での外国商標の経験は、3年弱なのですが、EUTMの異議を受けたも、異議したこともあります。被異議申立人側にたち、使用証拠の提出を求めるケースはありますが、異議申立人側で、使用証拠の提出を求められたことはまだありません。使用しているのが明らかなためでしょうか。
14%~16%は異議申立を受けたからといって、Cooling Off期間やその延長期間に、和解が成立することが多いこともあって、実際の争いにはならないのかもしれません。
相対的拒絶理由を無審査にした(異議待ち審査にした)というのが、EUTMの特徴です。無審査主義国と審査主義国が混在していた欧州を一つにまとめるための発明です。特許庁はすべて審査をする必要がなく楽ですが、出願人は大変になります。
さらに、Cooling Off期間で、和解を推奨することで、実際に審査官が異議の決定を出す必要があるものは、減します。
当事者同士で進める必要があるという発想自体は悪くないように思います。
EUIPOも、サーチレポートの提供や、TM Viewのアラート機能の提供など、ある程度のことはやってくれますが、最後は当事者主義というのは、一つ筋が通っているように思います。同意書の伝統があるので、その延長ということかもしれません。
相対的拒絶理由とは、いいネーミングです。