Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商標担当者になったときに読む本(その1)

シチュエーション説明

企業の商標担当者になったばかりの方を対象にして、数十の小テーマからなる「商標担当者になったときに読む本」を書くとして、このブログで、一度プロトタイプを作ってみようと思います。

 

小野昌延先生、江口俊夫先生のように商標の体系書・入門書のように書く方法もありますし、木村三朗、先生、大村昇先生のようにビジネス書として書く方法もあります。

 

この点、実際の商標管理上の判断は、文脈の中で微妙に変化します。そのため、ありそうなシチュエーションを設定して、登場人物の経験を通して商標管理を描く方法が適しているようにおもいます。

ちょっと難しですが、こちらの方が、リアリティがあるので、こちらの方法を取ってみたいと思います。

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1.シチュエーション 

主人公は、実際の知財部に配属されました。

 

会社は、数十年前に設立された会社で、ある分野では日本のトップシェアを有しており、名前を聞くと皆が知っている会社です。

 

商標業務の規模は、商標権が日本において500件ほどあり(1年で20~30件の新規出願、年50件の更新案件)があり、海外でもハウスマーク(ブランド)を中心に、1,000件ほどあるとします(年100件の更新対象案件)。

 

知財部に商標課がある会社なら、商標課長がいたり、商標担当の先輩上司もいるので、その指導を受けることができます。しかし、残念ながら、この会社には十数名程度の陣容の知財部があって知財部長もいるのですが、商標課はなく、商標の先輩社員が一人いるだけです。 

 

商標の先輩社員は、すでに定年退職を迎えた方で、現在は嘱託社員として、週4日勤務していますが、数年後には完全引退することになっています。

現在、実務はこの嘱託社員の方が回していますが、次の世代が必要ということで、採用の募集がありました。

 

ここで主人公の「私」の自己紹介です。私は、大学の法学部を出て、特許事務所に就職して、商標担当をしていました。10年が経過したところでした。数年前、難関の弁理士試験にも合格しています。

今回、転職サイトで、この企業の商標責任者候補募集という記事を見つけて、応募し、入社しました。

 

特許事務所に勤務した理由は、大学の講義で聞いた特許法の授業が、法律の中では実学的であり、技術も関係して面白そうだったので、特許業界に狙いを定めて就職活動をして、同じ大学の先輩の弁理士が経営している特許事務所に入りました。

その特許事務所では、特許の仕事は、エレクトロニクス中心で、文科系出身者には、少し技術理解が難しかったので、商標・意匠の担当になりました。

 

商標の案件は多く、更新や調査、新規出願、意見書作成、審判請求書の作成などを担当し、国内顧客のみならず、海外からの出願依頼などにも対応していました。

日本から海外に出願する業務も、200ヵ国地域とはいきませんが、数十カ国は経験しました。

特許事務所の商標・意匠の業務は一通りは経験したと思っています。

更に、経験を積むために、一度、企業の知財部で勤務したいと思っており、今回、転職したということになります。弁理士ということで、専門家として期待されており、将来は商標課を作る予定ということで、当面、会社に慣れるまでは、ベテランの出願課の課長付きの係長待遇という処遇です。

 

入った会社の直属の上司は、特許出願を担当しているA課長です。A課長は特許のことなら権利取得から事件まで、何でも知っているのですが、商標のことは不案内であり、商標の類似判断など難しくてできないと言っています。

会社生活では頼りになる課長ですが、商標管理については嘱託社員と相談しながら、「私」が主体的に進めていく必要があります。

 

知財部長は、技術者出身の事業部長経験もある方で、社内調整や社長をはじめ会社幹部との折衝などを得意としています。

知財については、大所高所からのコメントをしてくれますが、基本的には権利取得と事件関係の2つの課の課長に任せています。商標や知財法の細かいことは良く知りません。

 

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こんなシチュエーションではどうでしょうか。