Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商標担当者になったときに読む本(その10)

特許事務所と特許管理会社

 

商標調査は、手間とコストがかかる作業です。特に外国商標調査の場合、商標法の考え方が日本とは異なり、相当に専門的です。

 

特許事務所にいた時、外国商標については、出願以降だけを依頼するクライアントもありました。これは、調査を特許事務所ではなく調査会社(特許管理会社)に依頼しているためです。

ただ、調査から出願まで同じ現地代理人を使うことで、責任をもった権利取得ができる面があります。更には、更新まで現地代理人を使うことで模倣品対策にも有効です。

特許事務所の立場では、なぜ企業は商標調査は調査会社に依頼して、商標の権利化だけ特許事務所に依頼するのか不思議でした。

 

また、企業によっては、登録の10年後の更新は特許管理会社に依頼して、出願時に協力してくれた現地代理人から変えることもあります。

 

外国商標の権利取得には、どうしても、補正や意見書提出、審判や裁判もあります。これに対応するのは、経験豊富な日本人弁理士のいる特許事務所が一番よいようです。

一方、スピードやボリュームの要請される商標調査や、できるだけコストかけたくない更新管理では、調査会社や特許管理会社に分があります。企業はそこを使い分けているようです。

 

更新は、特許の年金納付と商標の更新を同じように考えるのか、商標では権利化後も重要と考えるのかで判断が分かれるところです。

 

時系列での使い分けをするには、企業にもある程度の力量と人手が必要です。企業の商標データベースが十分構築され管理されており、特許事務所に頼らずとも自分ですべての調査、出願、更新の業務ができることを前提に、その一部だけを特許事務所なり、特許管理会社に切り出せるだけの能力が企業に必要です。

 

そのパワーが無い場合は、信頼できる特許事務所に全て任せるか、サービスのよい特許管理会社で、調査、権利取得、更新まで一気通貫で業務を委託でき、データの保管まで提供してくれるに任せるかとなります。

 

「私」の入った会社は、権利取得については特許事務所に分があると考えているようですし、商標管理に人員がさけないので、調査と出願と更新を分けて管理するほどのこともなく、特許事務所に一括して任せているようです。

 

ただ、特許管理会社の提供するクラウド型の商標管理データベースだけは魅力です。企業で一番困るのは、特許データの入力作業です。折角登録を取れても、コンピュータへの入力ミスがあると権利は無かったものと同じです。

一般的には、特許事務所の事務管理力の方が上で、企業の事務管理能力は下です。

 

この点、特許管理会社の提供するクラウド型の商標管理データベースは、非常に魅力的です。特許管理会社は、自らの顧客の囲い込み戦略として、商標管理データベースを企業に提供していますが、これが特許事務所でも使えるようになれば、一番良いのになと思います。

 

特許事務所と特許管理会社の使い分けは、非常に重要なテーマだと思いました。

 

ちみにみ、弁理士の友人数名に確認したところ、特許事務所の外国商標調査の国内手数料が3万円というのが相場のようです。ただ、海外の費用は国によりますが、高い国(アメリカのフルサーチ)では20万円もします。

アメリカの調査など、特許事務所にいるときは、3万円の仕事なのに報告書は難しいし、また、やり取りに時間がかかるし、元がとれないなと思っていました。

しかし、企業の視点では、合計23万円の仕事であり、それなりの金額の仕事です。

立替金の売上にはなっても、右から左に消えるだけですので、ここは企業は考える必要がありそうです。

 

調査実費(DB費用)は無理ですが、現地にも安い事務所もあります。しかし、あまり安いところを使うと、調査の質が担保されず、安物買いの銭失いになりそうです。

このあたりは、企業の担当者が犯してしまいそうな誤解です。