Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

商標担当者になったときに読む本(その14)

一カ月半で同意書取得は可能か?

今回、使いたい商標は、甲商標です。甲商標に抵触する商標は、*甲商標です。*甲商標の権利者は、フランスの乙社であり、*甲商標は乙社にとっては、ハウスマーク/コーポレートブランドではなく、ペットネーム/ネーミングということになります。

 

ハウスマーク/コーポレートブランドの場合、同意書やライセンスを受けることは非常に難しいので、まず、社名を確認します。

 

相手方が大きな会社の場合は、意思決定に時間がかります。

通常の出願が引用例拒絶を受けたり、異議申立を受けた場合の同意書取得交渉は、半年程度かかるのこともざらです。

欧州連合商標制度(EUTM)では、異議申立時の平和的共存に向けた話合いの制度として、Cooling Offの制度がありますが、この期間は2ヶ月ですが、最大で22ヶ月ぐらいまで延長できます。

当事者が同意書を出しても良いと思っても、細かな条件を決めるとなると、半年は必要という気がします。

それを1ヶ月半でやることは至難の業です。

 

今回は、フランス一ヵ国ではなく、欧米の複数の国で抵触するようですので、単純な同意書取得だけでなく、各国の同意書取得の前に、併存契約書を結ぶ必要もあります。

 

何はともあれ、相手方の商標の使用実態の確認が重要です。Webサイトでデスクトップ分析したところ、相手方が*甲商標を使用している形跡はありませんでした。

登録は、すでに5年以上前から登録されているので、ストック商標の可能性は高いのですが、Webに載らない商品なのかもしれません。

 

ここは現地代理人に確認して、興信所(探偵)を使った商標の使用実態調査が必要になります。この使用実態調査に2週間かかります。一カ月半の内、2週間が消えますので、残り、1ヶ月となります。

 

興信所の調査を経由せずに、同意書取得/併存契約書締結を申し入れる方法もありますが、相手方にNGと言われたり、検討を少し放置されてしまうと、時間的に間に合いません。

 

商標は、使用しているかどうかが全てです。不使用であれば、不使用取消請求をすることも可能です。

相手方の使用実態をつかむことは、最大の武器であり、ここは時間がかかっても、甲新書を使うことにしました。

 

B部長には事業部長から本件の対応を宜しくお願いしますという挨拶がありました。

A課長や、D課長は心配そうです。もし、失敗したときの知財部の評判が少し心配です。

Cさんは、外国商標は商標調査で、使用可能となったものだけを使うべきというたちばです。海外との交渉は、やったことはなく、やるべきではないという思いのようですが、何も言いません。

 

少し危険ですが、内諾が取れた段階で事業部は甲商標に決定して準備を進めるとのことです。

興信所からの返答が来るまで2週間、この会社の研究をしたりして過ごしました。