開示している上場企業では、7割が10年超
2020年1月19日の日経で、監査法人を10年以上変えていない会社が、継続年数を開示した企業の中では7割になっているという記事があります。
最長は、味の素で68年、次に三井不動産58年などです。
監査法人、10年超継続が7割 交代で質の低下を懸念 :日本経済新聞
- 欧州では企業と監査人のなれ合いを無くし、会計不祥事を防ぐ目的で、原則として10年を上限に監査法人を変える制度を2016年に導入
- 日本でも議論をしたが、企業の負担増
- 金融庁は見送る方針
- 上場企業は、2020年3月期からは、有価証券報告書に監査人の継続期間を記載する義務
- 10年超が7割の数字は、先行開示した会社の数字
- 事業リスクを知り、監査ノウハウを蓄積するには時間がかかる
- 一方、2019年に監査法人を変更した上場企業は、143社と3割増加
コメント
同じ監査法人を使っているとなれ合いが生じ、公正な監査ができないので、監査法人を変更するという話です。東芝やオリンパスの事件を防止するための手段のようですが、企業や監査法人に反対の意見があるようです。
同じ監査法人を使いながら、監査法人内で責任者をローテーションすることはあるようです。公認会計士法などで、継続可能期間が7年で、インターバルは2年置かないといけないとあるようです。
チームで監査するので、筆頭監査人が変わっても、監査の継続性は担保されるということだと思います。
大手監査法人以外の監査法人からは、やはり欧州のように、10年の上限は設けるべきという意見もあるようです。しかし、公認会計士法などのルールを決めるのが、大手監査法人なので、改革が進まないという意見もあるようです。
監査法人を変えると企業側の負担が増えるようですので、金融庁もその意見は無視できないのでしょうが、金融庁がきめれば、企業は監査についての体制を組みなおして取り組むので、鶏と卵ということもできます。
さて、特許や商標では、通常は複数の特許事務所や特許管理会社を使い、そのときどきで、一番パフォーマンスの高いところに、仕事が行くということになりますので、なれ合いというものもないように思います。
商標の話ですが、確かに、特許事務所側としては、たまにしか仕事が来ない会社の仕事は手がかかります。日常的に多くの仕事が来る会社の方が、会社の事業も理解できていますし、商品・サービスも理解できています。そのため、調べものなども少なくて済み、スピーディです。
沢山、仕事をやっている会社の仕事は、スピーディにできるので、特許事務所としても時間等が少なくてすみ、アワリーで考えると安くできる、ということになります。
反対に、一見さんの仕事は、高くなり、多くの仕事をくれる会社の仕事は、安くなります。
そもそも、監査のような業務がそもそも存在しないので、なれ合いという問題は生じません。
この話は会計監査の話ですが、監査にはISOの環境監査や、品質の監査などもあります。
ブランドでも使用実態調査のことをBrand Auditといい、ブランディングをするときは、これを初めにやります。通常は、ブランドの使い方の実際を、見える化することを指しますが、より広く、ブランド管理体制や、ルールの徹底、ブランド研修の実施状況、従業員の意識調査、取引先の認識の調査をやってみることも可能です。
健康診断のようなものなので、ブランド監査をすることは重要なことです。
そこから考えると、特許や商標にも、監査があっても良さそうです。特に、商標管理は人材不足であり、そもそも何をやってよいのかも明確ではなく、商標管理が十分にできていない会社が非常に多いように思います。
商標業務の専門家に、一度、チェックを受けると良いのですが、商標監査をやると言っている会社や特許事務所は聞いたことがありません。
各社、各事務所とも、単元ごとに切り分けれた、個別の仕事を依頼され、実行しているだけです。
健康診断、棚卸、Audit、監査、言葉はいろいろありますが、ISOの環境監査ようにきちっとした仕組みを作ることが、結局は、回り回って企業にも良いということになと思います。
商標ISOができないものでしょうか。商標やブランドにとって、監査は重要だと思うのですが。