Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

店舗の外観、内装の商標出願が可能に

改正商標法施行規則が施行(4月1日)

特許庁のサイトで、商標法施行規則が2月14日に改正され、4月1日に施行されるというリリースを見ました。

商標法施行規則の一部を改正する省令(令和2年2月14日経済産業省令第8号) | 経済産業省 特許庁

 

内容としては、次になります。

  • 立体商標を実線、破線等で描き分けることを可能とする改正
  • 立体商標について、願書に「商標の詳細な説明」を記載することを可能とする改正
  • 施行日は、2020年4月1日

 

省令改正の概要というPDFが添付されています。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/syoreikaisei/shohyo/document/shohyo_20200214/01_gaiyou.pdf

 

店舗の外観・内装や複雑な物品の形状をより適切に保護するためとあり、店舗の外観や内装の商標出願解禁となります。

 

ちなみに、意匠法の改正の施行日も、同じ、2020年4月1日ですので同日です。

「特許法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が閣議決定されました (METI/経済産業省)

 

意匠法の改正により、店舗の外観や内装、そして建築物まで、意匠の対象が広がっていますが、商標でも店舗の外観や内装を出願できるようになります。

しかし、今回の商標法施行規則の改正の文では、建築物には言及されていませんでした。建築物は商標では想定外なのでしょうか?

 

コメダ珈琲の事件に端を発していますが、どこまで行くのかなあという感じです。トレードドレスは、私が大学生の時(30年以上前)から日本でも良く議論されていました。指導教官が最近はトレードドレスの論文が多いと言っていた記憶があります。

 

トレードドレスというぐらいですから、不正競争防止法や商標法の対象とするのが、普通です。意匠法の対象にするのは、違和感があります。米国のランナム法は、不競法の上に商標登録制度が乗っかっているような法律なので、商標登録制度に流れていた面があり、通常は不競法で対応すべきマターなのだと思います。

 

さて、これから出願人は、商標と意匠のどちらで対応しようかと悩むのではないでしょうか?

 

そもそも、意匠でも商標でも、店舗の外観や内装の権利範囲の解釈ができるのかなと疑問に思います。

意匠と商標は全体観察が基本です。しかし、意匠の公知事項の認定と権利範囲からの除外、商標の要部抽出など、簡単ではなさそうです。

 

意匠や商標には、類似概念がありますが、権利者と侵害追及を受ける者で、相当に意見が対立するように思います。

 

実線と点線で権利範囲を明確にとか、商標の詳細な説明の記載とか、多少の方法はありますが、最後は、不競法での混同のおそれでスパッとやるしかなさそうです。

店舗の外観、内装は、一般的出所混同の理論とは、親和性がないと思います。

類似は、過去事例から推測した擬制の集合体であり、過去事例の無いところは、具体的出所混同しかないように思います。

 

結局、店舗の外観、内装を意匠や商標で登録対象を拡大することは、権利の判断を最後の裁判所に任せてしまう流れを加速するように思います。

 

私見では、意匠と商標とでは、図面作成が商標の方が楽そうですので、店舗外観と内装は商標が有利と思うですが、さて、どうなるでしょうか?