Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

音楽教室の著作権料

日経の分析

2020年3月22日の日経に、音楽教室著作権使用料についての東京地裁判決とその控訴に至った背景などに関する記事がありました。

(電子版 Selection)「教師のお手本」に著作権料 音楽教室の味方は世論 :日本経済新聞

新聞記者による判例評釈のような感じです。論点が列挙されています。

  • 東京地裁判決は従来の判例に沿ったもの
  • 著作権法では、権利者は、公衆に聞かせることを目的として演奏する権利を専有する
  • 論点1:演奏主体は音楽教師であって音楽教室ではない。これについては、1988年の最高裁判決(カラオケ法理:演奏を支配・管理し、営業上の利益を得ている店が、侵害の主体)がある
  • 論点2:公衆とは。2004年の名古屋高裁のダンス教室の音楽演奏の判決がある。教室に入る時点では誰しも「不特定」で「公衆」にあたる
  • 論点3:練習や指導でも「聞かせるための演奏」か。東京地裁著作権法の文言にない制限を付加することになるとして今回、聞かせるための演奏とした
  • 法律専門家は、JASRAC有利を予想。法解釈としては、東京地裁の判断は一貫性があるが、不満の声
  • 理由は、「カラオケ法理」の拡大解釈への懸念と、著作権法の「文化の発展に寄与する」という趣旨に反するという疑問
  • 社会一般の感覚とは溝。音楽教室は、世論を味方につけ、法廷闘争を続ける
  • 音楽教室とカラオケとの違いをどう説明するか。説得力ある論拠が必要

コメント

論点3の「練習」や「指導」が、人に「聞かせるための演奏」かという部分ですが、「細切れに弾いており、音楽としての官能を享受できない演奏には、著作権の権利は及ばない」という主張だったようです。

この論点3は、確かにまだ地裁判決が出ただけですので、確定はしていません。現在の原告の主張を超える主張が必要と記者は言っていますが、簡単ではなさそうです。

 

さて、貴社の署名入り記事ですが、判例評釈のような記事です。新聞記者の法解釈の水準は、相当高いんだなと思いました。

知財の仕事を始めた30年前の新聞にある知財の記事は、法律的には適当な感じでしたが、知財を専門に扱う記者も増え、専門性が増しているようです。

そして、それを受け入れる一般読者がいるということだろうと思います。

 

昔から憲法に関する裁判、公害事件や労働裁判などは、社会的なインパクトも大きいので、新聞記事であっても法的に詳細な説明がありました。最近は知財問題が社会の関心の大きな位置を占めているということなんだと思います。

 

本件は、今後、世論がどう変化するのか、見ていきたいなと思います。あまり世間の認識とかけ離れた判決は、苦しいように思います。

 

別の話になりますが、昨日、著作権法でも、有名な加戸守行氏の死去というニュースがありました。 

加戸守行氏が死去 元愛媛県知事 :日本経済新聞

 

 

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