Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

アマゾン出品業者への業務停止命令

消費者庁が13事業者対象に

2020年4月8日の日経に消費者庁がアマゾンに出品している13の通販事業者に対して特定商取引法違反として一部業務停止命令を出したという記事がありました。

偽ブランドに業務停止命令 13事業者、アマゾンに出品 :日本経済新聞

  • ルイ・ビィトンやエルメスの偽物を、並行輸入品として、アマゾンに出品
  • 13の通販事業者に対して
  • 特定商取引法違反の一部業務停止命令
  • 出品事業者に、同法違反の行政処分ははじめて
  • 出品は既に削除。アカウントは停止
  • 事業者は使われなかったり、関係がない住所や電話番号を記載
  • 消費者から連絡がとれないと相談あり
  • 消費者庁は、商品購入時に事業者が実在するか、住所や番号を確かめるように呼びかけ

同じ内容が、同日の朝日新聞にもあります。こちらは、

  • 業務停止は3ヶ月
  • 事業者と連絡がとれないとの苦情が相次ぎ、調べたところ、アカウントを開設する際に登録された住所や電話番号が実在しなかったり、無関係のものだったりした
  • 各事業者の名称

とあります。

 

コメント

消費者庁のWebサイトにありました。2020年度の公表資料の第1号です。

https://www.caa.go.jp/notice/entry/019559/

広告が住所や電話番号を記載していない、また、広告で偽物(模倣品)であるのに、並行輸入品(真正品)であるとしているのは、著しく事実に表示する表示であることが理由とあります。

 

通常、偽物の場合は、刑事罰や民事事件(権利者が民事裁判や警告書を出す。アマゾンに情報提供してアカウントをストップする)となり、消費者庁の出番は少ないのですが、今回は、消費者庁が動いています。

 

消費者は偽物をつかまされたとして、どのように行動するでしょうか?通常はアマゾンに連絡して、返品や代金返還を求めるのではないでしょうか?

私も一度、SDカードで引っかかったことがありますが、アマゾンに電話すると、商品を送るように言われました。私の場合は、そのSDカードのメーカーの担当者と知り合いだったので、メーカー担当に送ったので、アマゾンからの返金はありませんでした。

 

中に、業者に直接、連絡を取る人もいると思いますし、その方が更に消費者庁に連絡することもあると思いますが、消費者庁にまで情報を入れるのは、被害者の中では少数派ではないかと思います。

その少数派の声が多数あるので、消費者庁は公表に踏み切ったのだと思います。

 

根本原因ですが、推測で申し訳ないのですが、日本のアマゾンのアカウント設定が緩やかであるのが原因という気がします。会社登記簿謄本や、個人であれば住民票を求めるとか、電話して確かめるとか、営業マンが会社訪問するとか、アマゾンに来てもらうとか、興信所を使ってチェックするとか、消費者を守るために、やれることはあるように思います。

 

中国のタオバオなどは、商標登録証のコピーや、商標権者の承諾書のようなものを求めますし、欧州のアマゾンも同じようなことをしているようです。

日本のアマゾンも、アカウント設定時の審査を慎重にしないと、今後とも、問題が多発するようにお思います。

 

消費者庁は、13事業者に命令を出していますが、このアカウントは削除されているので、すでに意味はあまりありません。朝日新聞を見た人が、私の買った業者は偽物販売業者であると理解して、アマゾンに代金返金を求める程度です。

 

消費者庁が、公表に踏み切ったのは、アカウント設定が甘いアマゾンに対する制裁と考えた方が素直なように思いました。

 

商標法上は、ルイ・ヴィトンエルメスは被害者であり、刑事的には救済を受ける立場ですが、民事的には自ら戦うしかなく、自らの顧客である消費者を守る責務を負います。自ら戦うことができない商標権者は、消費者からソッポを向かれるだろうという立場です。

相手が、同業ライバル他社ぐらいなら、この民事的な対応でも良いのですが、模倣品業者にこれではお手上げです。民事は限界があります。

 

消費者庁が、少し遠い法律(特定商取引法違反)で、動き出したということは、商標法侵害を、刑事も十分でなく、権利者の民事でも十分でなく、日本でも行政が取締るという中国的なフェーズに移行したという重要な意味があるのではないかと思いました。

韓国の特許庁には知財Gメンのようなものがあり、模倣品対策をやっています。

 

ちなみに、経産省の模倣品対策室は、2020年4月1日から、特許庁に機能移管されているようです。海外を中心とした日本権利者等の皆様からの模倣品・海賊版の相談を受け付けているには、政府模倣品・海賊版対策総合窓口であり、それは特許庁国際協力課 模倣品対策室とあります。

政府模倣品・海賊版対策総合窓口 | 経済産業省 特許庁

特許庁は、海外の被害を中心にみるということのようです。

 

特許庁が取り組む方法もあるとは思ったのでが、日本では消費者庁になるのでしょうか。財務省管轄の税関とならび重要な官庁になりそうです。