Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新型コロナウイルス薬の特許の議論

途上国の要求と製薬会社への補償

2020年4月16日の日経に、新型コロナウイルス関連で、薬の特許権の制限が議論になっているという記事がありました。

(真相深層)コロナ薬「特許に制限」浮上 途上国など、公共の利益優先求める 製薬会社への補償、議論必要(写真=ロイター) :日本経済新聞

  • 途上国の政府などが、特許に強制実施権の発動を検討。メーカーに安く薬を供給するように促す
  • 国境なき医師団」は、3月下旬、新型コロナウイルスの治療薬の特許が暴利の種にならないよう声明
  • 中国で新型コロナ治療に使われた「カレトラ」の製薬会社は、全世界で特許権を行使しないことを決めた
  • 3月中旬のイスラエルの強制実施権発動が背景
  • もともと、インドは強制実施権に積極的。がん治療薬で、バイエルは6%の料率に(通常医薬は8%~50%の料率)
  • 新型コロナについては、アメリカ、カナダ、ドイツなど先進国も強制実施権の発動のを求める動き
  • 落としどころの議論が必要

コメント

日本の「アビガン」は中国で特許が切れているという話がありましたが、米国の「レムデシビル」は新薬のようですので、まだまだ特許の存続期間があります。この薬は、治験の結果が良好であるという記事もありましたので、新型コロナウイルス感染症の切り札になるのかもしれません。

 

日経の記事によると、今回は、米国やカナダやドイツなどでも、強制実施権の発動に追い風が吹いているようです。

 

関連で、2020年4月19日のHAFFPOSTに、国連のグテーレス事務総長の寄稿文があり、その中でも、今回の新型コロナウイルスは異例の事態であり、異なる手段が必要という話がありました。

 

記事にあるように、日本で公共の利益のために通常実施権が設定されることはないのかもしれませんが、イスラエルやインドなど、他の国での強制実施権の設定などがあると、グローバルでの企業の方針としては、全世界で差止をしない、安価でライセンスするなどの方法をとるしか方法がなくなるのかもしれません。

強制実施権の行使は、特許の南北問題の火種でしたが、今回は世論の後押しがあり、特許権者は少し権利制限がされるかもしれません。

 

電気製品であれば、コストを積み上げる方式で原価計算して、利益を載せて、製品の価格を決めますが、薬の価格の設定というのは、どのようにやっているのでしょうか。

 

薬価自体は安くなっても、広く使われると、ボリュームがあり、それなりに利益があがり、研究開発投資の回収はできるのではないかと感じもします。

しかし、がんや生活習慣病の薬のように、継続する病気に対する薬であれば、ランニング的に収益を享受できるのでしょうが、新型コロナウイルスのような薬となると、次はいつ売れるか分かりません。

そのために、「アビガン」の国による備蓄のようなことになるのかなと思いました。

薬の価格設定は、難しそうです。