Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

フェラーリ250GTOの著作物性

AIPPIの2月号

AIPPI誌の2020年2月号に、イタリアのボローニャ裁判所の専門ビジネス部門(高裁に相当)が、フェラーリ250GTOの著作物性を認めたという、イタリアの欧州商標弁理士・欧州意匠弁理士の論説がありました。

 

相手方は、Ares Design Modena S.r.lという、サードパーティのシャーシを使用して自動車のカスタマイズ・製造を行う会社です。

 

フェラーリは、EU商標権(立体商標)、共同体意匠、不法行為著作権侵害、不正競争などを主張したようですが、第一審の裁判所は商標権侵害の主張だけを検討して、著作権侵害の争点を検討しなかったようです。

 

フェラーリが上訴したようです。単独裁判官の予防的差止の判決は破棄され、合議体によって、2019年6月20日に今回の判決が出たとあります(判決番号等は不明)。

 

AIPPIの2月号には、フェラーリ250GTOのEU立体商標の図面(写真)(2008年9月29日出願)と、Area社のレンダリング画像(CAD図面のようなもの)が掲載されています。

 

フェラーリ250GTOの特徴は、「低く長い先端部、前側の3つの半楕円形ダクト、なだらかに傾斜した後部スタイリング」とあります。

前側の3つの半楕円形ダクトは、EU立体商標の写真では不鮮明で、判別できません。

 

さて、商標権侵害は一審では否定されたようです。そして、二審でフェラーリ250GTOの著作物性が論点となり、創作性(creativity)が肯定され、美術的価値があるとしたようです。著作権侵害と不正競争が認められ、差止ができたようです。

 

コメント

ざっくり見て、Areas社のレプリカ版は、フェラーリ250GTOの特徴を掴んでいますが、現代的に処理されたデザインだなというのが感想です。

 

論説にあるEU立体商標の番号は、ちょっと間違っており、実際は、No.006543301と末尾に「1」があるようです。これをGlobal Brand Databaseで見てみると、前側の3の半円形ダクトが見当たりません。

 

Googleフェラーリ250GTOを画像検索すると、前側の3つの半円形ダクトのある製品とないものがあり、この点については、色々なデザインがあるようです。

前側の3つのダクトを特徴とすると、商標権侵害とするにも問題があり、著作権侵害を主張しないと仕方なかったのかもしれません。

 

さて、イタリアの裁判所の判決が、欧州の司法制度でどの程度の影響力があるのかは分かりませんが、自動車の形状が著作権でも保護可能というのがポイントです。

昨日のポルシェは意匠の保護について、自分の過去の有名なポルシェ911が引用されて、自己の後継の意匠が保護されないという事例でしたが、そのような時に対策となるのが、立体商標著作権です。

 

特にイタリアの判決は、立体商標でも十分保護できなかった場合に、ウルトラCとして著作権侵害の主張もあり得る(相当、美的なものに限定されるのではないかと思いますが)という意味で、注目すべき判決だと思いました。