Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「Re就活」と「リシュ活」

侵害裁判と異議申立に継続中

2020年5月15日の日経電子版に、学情の「Re就活」という第二新卒対象の就職サービスと、一般財団法人のコンソーシアムが行っている「リシュ活」という履修履歴を登録して企業から就職オファーを受けるサービスが係争となり、侵害裁判と商標登録異議申立が行われているという記事がありました。

「Re就活」と「リシュ活」 商標権侵害で訴訟 :日本経済新聞

  • 学情の20代向け転職サイト「Re就活」(リシューカツ)
  • 履修履歴活用コンソーシアムの大学生が履修履歴を登録する就職支援アプリ「リシュ活」(リシュカツ)
  • 対象とする利用者などは異なる
  • Re就活を運営する学情が、リシュ活の運営団体に対し、商標権を侵害を理由に、リシュ活の商標の使用禁止と1億円の損害賠償を大阪地裁に提起。不正競争防止法で、ドメイン名の使用差し止めも請求
  • リシュ活はスマートフォンのアプリで大学生が履修履歴を登録すると、科目や成績に着目した企業からインターンシップや採用の案内が届く仕組み
  • リシュ活は、2019年9月に特許庁に登録。学情特許庁への異議申立もしている

というような内容です。

 

コメント

「Re就活」と「リシュ活」は、商標だけを取り出して、類否を考えるとすると、昔の称呼類似中心主義の時代は商標類似であり、現在の外観・称呼・観念の総合観察の時代になると非類似と判断されるのかなという気はします。

 

日本では、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字などの、多様な言葉で商標が表現されますので、ローマ字と漢字がまじったり、カタカナと漢字がまじったりすると、区別できることが多いようです。

 

ただ、称呼を標章(マーク)の類似の王様という時代が長く続きましたので、方針転換に、弁理士などの実務家からは批判が多いところです。

 

「Re就活」は第二新卒向けのサービスのようですので、この「Re」は、「件名」の「Re」ではなく、「再び」の「Re」のようです。

会社などで、メールを見る仕事をしていると、「Re:」は案件を指すことが多いように思いますので、そっちかと、思いました。

 

「リシュ活」も「履シュ活」とでもしておけば、もっと区別ができやすかったのに、なぜカタカナに拘ったのかな、と思いました。「リシュ活」でも「履シュ活」でも先天的登録性(識別性)の観点では差はないように思います。

 

本当は、マークの議論ではなく、サービスの議論も必要だろうと思いますが、双方の指定商品・役務をJ Plat-Patで見ましたが、35類と41類で、指定役務の記載内容も大差ありません。

求人情報の提供というあたりで、括れてしまうようです。従来型の第二新卒向けの「Re就活」と、履修状況の登録と企業からのオファーという「リシュ活」では、サービスの内容が全く異なるように思いますが、商標の実務では、この差を表現しても意味がないということで、同じような指定役務になっているようです。

あるいは「リシュ活」は、指定役務で差を出すのではなく、あえて同じような役務にしておいて、マーク非類似で突っぱねる作戦なのかもしれません。

 

裁判では混同を中心に、異議ではマークの類似の議論になるんだろうと思いますが、裁判がメインで、異議はサブですね。

 

民事裁判では、マークの類似の議論をしていても結論が出ないので、原告は混同の事実を立証する必要がありますし、被告の方は、サービスの利用者層の違いや、実際の混同が生じていないことを立証するしかないように思います。

双方、アンケートでもやって、徹底的に議論するしかないように思いました。

 

被告が「履シュ活」にすれば、一挙に和解だとは思いますが、徹底的に議論して、現在の不競法的な見方と、商標法的な見方が交わっていない商標制度あり方や、類似商品役務審査基準に縛られた商標実務の問題が議論されれば、より有益な議論になるように思いました。