Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

脱ハンコの機運は盛り上がるか?

ハンコは在宅勤務推進の妨げ?

2020年5月22日の日経(夕刊)に、ハンコ関係の話がまとめてありました。1.コロナで脱ハンコの機運が盛り上がるか、2.ハンコは在宅勤務推進の妨げになるのでは、3.印鑑登録があるのは日韓台のみ、などの話があります。

新型コロナ:「脱ハンコ」コロナで機運 在宅勤務推進の妨げに :日本経済新聞

  • テレワークで困ったことは、オフィスに保存する紙書類の確認・入手ができないこと(46%)に続き、書類へのサインや押印がもらえないこと(28%)が理由
  • 印鑑証明書が必要な行政手続きは100種類以上
  • ハンコは古代メソポタミア→中国→日本へ
  • 1870年に太政官令では、証書にはサインと実印が必要とさだめた。そのあと、偽造のできないサインが良いという論争
  • 1900年に解決策として、サインができないときに押印で代用できるとした
  • 文書の多い、大蔵省と銀行の主張による
  • 2001年の電子署名法、2019年のデジタルファースト法で、電子化が進められているが、ハンコは残っている
  • 社内の稟議について、米国ではサインでもなくメールによる決裁へ
  • 印鑑登録は日、韓、台湾のみ。中国は企業のみ組織印を使用するが、個人はサイン。アメリカは公証人によるサイン証明

 

コメント

テレワークが進まない理由として、ハンコがやり玉に挙がっていることが多いですが、ハンコはTOPの理由ではなかったようです。トップはペーパーレスの遅れが、TOPの理由です。

 

新型コロナウイルスで、ハンコ文化が変容するかどうかは、1.行政手続きと2.民間手続きと3.個人に分けて考える必要があります。

 

今回、テレワークで印鑑がもらえないので困っているというのは、おそらく2.の民間の内部の話です。

  • 行政手続きで、100種類もハンコが必要なものが残っているということです。印鑑証明による印影確認による真正な証書であることの証明が必要な手続きがそれだけあるということなんだと思います。
  • 民間手続きは社内の稟議、経費処理、請求書の発行です。
  • 個人は、すでに、相当、ハンコからサインに変わってきているように思います。金融機関に講座を開設するときは、実印は不要ですが、印鑑が必要なことが多いようです。
  • 印鑑証明の必要な実印は、住宅を買うときのローンと、自動車を買うとき(軽自動車は不要)、ぐらいです。ローンを組まずに家を買い(親から譲り受け)、軽自動車に乗っているなら、一生印鑑証明を使わないかもしれません。

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民間の内部の話は、サインやメールで、何とでもなります。

一方、民間の外の会社との話は、社会の風習、商慣習の話です。契約書や請求書にサイ

ンで良いとするかや、「紙」でなくてもPDFで良いとするとかであり、確かに改善できる点ではありあます。

特に電子的な請求書をOKするのは、民間としては重要なように思います。

 

nishiny.hatenablog.com

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行政手続きでも、民間でも、個人でも、印鑑を止めるとすると、サインやメールなどの本人の意思確認の方法が別途が必要になります。

行政も、個人向けのものは、マイナンバーカードという方法があるでしょうが、法人向けのものは、代表者印と印鑑証明を前提にしているように思います。

 

これをサインと公証人のサイン認証に変えるとすると、公証人役場の数や公証人の数が足りなくなるので、簡単ではありません。

印鑑証明の代わりにサイン登録制度があるかもしれませんが、それを、全国の会社に要求することも大変そうです。

 

印鑑の良い点ですが、例えば、委任状について、大企業で社長のサインをもらうは至難の業ですが、社長印を押印してもらうのは案外楽です。組織責任者(課長)の発行した押印依頼書があれば、委任状程度なら押印してもらえます。

韓国などは、特許出願の委任状に社長のサインを求めます。欧米企業ではエンパワメントして、General counsel(法務部長)がサインの代行をしていることが多いと思いますが、韓国は代表権のある人のサインを求めます。

韓国で特許出願をする場合の非関税障壁とも云われていますが、日本企業では、上記のように印鑑があるので楽です。会社によっては社長特許印という特殊印鑑を知財部が持っている会社も多いと思います。

もし、印鑑をサインに変更するなら、このエンパワメントの文化を根付かせる必要があり、これは相当に大変そうです。

 

まずは、請求書のPDFを原本と認めるというのが、一番、優先順位が高いかなと思いました。